「僕も、やらなきゃ」
村正の後に続くべく、陽も己の心を奮い立たせる。手をぎゅうと握ると、両腕のブレスレットが熱で赤く染まり始めた。
「コロナックル!」
陽の拳に熱い炎が宿る。煌々と燃え盛る拳で、目の前のゴキモンに殴りかかった。
「いけ~、陽~……はっ!」
この時、マチはとあるニュースを思い出した。ゴキブリを駆除しようと火をつけた結果、体表を覆う油に引火し家ごと燃えた恐怖のニュースだ。
しかし、マチの懸念は悲しい形で外れる事になる。
「残念! 腰が入ってないパンチじゃ当たんねえよ!」
ゴキモンはゴキブリらしい俊敏性を発揮し、陽のパンチを難なく躱す。
ゴキモンの余裕の表情は、陽の中に焦燥と少しの苛立ちを芽生えさせた。
攻撃が当たらず苦戦しているのは陽だけではない。
「ルナクロールナクロールナクロルナクロっ! かすった? かすってないね!」
大胆な実力アピールから繰り出される驚きの腕ぶん回し。
跳兎の攻撃……というにはあまりにも洗練されていない動きは、当然の如くゴキモンには当たらなかった。
この場合洗練されているか否かは問題ではない。クラリネのネコパンチだって、ただの一度もゴキモンに命中していない。
「にゃー! にゃー! ふにゃー!!」
パンチが駄目ならひっかきだと、手の形を「グー」から「パー」に変えて振り下ろしてみる。
テイルモンは「サーベルレオモン」という高位のデジモンのデータから作られたグローブを装着している。だが悲しいかな、攻撃の命中率自体は変わらない。
「どいつもこいつも下手クソか!」
村正から怒号が飛ぶ。その直後に乱れ舞う火花と稲光。村正も(クラリネを除く)仲間達もレベルは同じ「成長期」、すなわち同年代である。だが、村正は仲間よりずっと戦闘に慣れていると、タツキが素人目に見ても分かった。
相変わらず「竹刀の扱い方」としては赤点だが、がむしゃらに腕を振るだけの仲間に比べれば動きに無駄が少ないように思える。
しかし、彼の怒りは自分自身にも向けられていたようで――手数自体は仲間達よりずっと多いにも関わらず、炎も雷も黒い残像に追いつきすらしなかった。
(人間がゴキブリを叩いて潰すのとは訳が違う。やっぱりデジモンは、生き物としてのレベルが違う……!)
タツキは歯噛みする。自身のパートナーが果敢に戦いながらも敵に敵わず、しかし人間の自分が手出しできる次元には無く手助けの一つもできない。それがタツキは悔しかった。
きっと、マチも同じ思いをしているだろう。
パートナーとは、何なのだろうか。
◇
翻弄されている。ただただ速さに翻弄されている。
百のゴキモン達は誰もこちらを攻撃してこない。ただ速いだけ。それなのに、こちらの誰も思うように動けない。
「ゴキブリは疾いに決まってる! ゴキブリ見たことあるか?」
「聞いたぜ、ホッカイドーとかいう場所にはゴキブリいないんだってな」
「オキナワって所には、カブテリモンくらいデカいゴキブリがいるらしいよ」
「最高じゃん」
周りのゴキモンにも話題が伝播し、ゴキブリにまつわる無駄話が群れ中で行われている。
つまりそれは、無駄話をしていても余裕と思われてしまっている事に他ならない。
100匹もいればまぐれ当たりも有り得るか、という希望も容易く打ち砕かれる。
「やっぱり世代差を覆すのは難しい、だから説得で終わらせたかったのに……!」
陽が悔いるように言葉を絞り出す。体中から出ている炎もどこか弱々しい。
デジモン達の中で「諦め」の言葉がよぎる中、一人だけ様子のおかしい人間の女子高生がいた。
「見てなうさぴょん。攻撃っていうのはこう当てるんだよ」
そう言って、様子のおかしい女子高生こと愛一好は腰を深く落とした。ざりざりと音を立てて右足を後ろに向かって擦り、左足は深く地面に根差し、その左足を軸にして勢いよく右足を振り上げる。
うさぎが跳ねるように、力強くそれでいて軽やかに。
「おっ、人間の嬢ちゃんも参戦かい? よしよし、かかってきなさゴブファァ……ッ!?」
ここまでだれ一人として攻撃を当てる事が叶わなかったゴキモンだが、遂に愛一好の爪先がゴキモンの鳩尾を捉えた。
よりによって人間から一撃を食らったゴキモンに、心と体の二重の衝撃が襲う。
例えるならばそう。よちよち歩きの赤ん坊をなめてかかったら意外と力が強くて痛い目を見た時のような、そんな感覚が。
「すげえよメイちゃん……。メイちゃんすげえよ……!」
心の衝撃を受けたデジモンがここにも。
跳兎は目を輝かせて、キックの姿勢から着地した愛一好に駆け寄った。
人間もデジモンも、子どもが喜ぶ時の仕草は変わらないのだろう。今の跳兎の様子は、憧れのヒーローを目の前にした子どものそれだ。
「うむうむ。では、うさぴょんもやってみたまへ……足が無え!?」
愛一好はこの瞬間までルナモンには足が無いのを忘れていたらしい。これではキックをレクチャーしようがない。
そして愛一好の後に続く者はおらず、ゴキモンは引き続き優位を誇るのだった。
「ぬはははは! 攻撃を当てられたのは人間の姉ちゃんだけだぞ! いやそれはおかしくない?」
ゴキモンの言う通り、愛一好のキックの威力は人間にしてはおかしい。だが、おかしいのが愛一好だけではどうにもならない。愛一好だけで百体分蹴りまくるというのも現実的ではなく、反撃を食らえば流石の愛一好も致命傷だろう。
このままでは決してタツキ達の勝利は訪れない。
「そうなのメイちゃん?」
「さすがの愛一好さんも耐久力まではお化けじゃないんだな」
この状況を最も憂いていたのは、――どうしたことか、開戦を煽った筈の八武羅々だ。
「……ちょっと流石に100匹は多すぎたかしら」
「え?」
パートナー(となぜか率先して戦っている愛一好)を見守っていた子ども達は、一斉に信じられないものを見る目で羅々を見た。
この状況を一から十までお膳立てしたのは羅々の筈なのに、なぜ冷や汗をかいているのか。
「だって、流石に101匹ゴキモンが始まるだなんて、思ってなかったんだもの。二十ゴキモン漂流記なら成長期でもなんとかなるかなるわよね~、と」
言い訳に多少のユーモアを交えたつもりになっても無駄である。
「この斑目愛一好を以てしても、どうにもなってないんですが?」
「それは最初からどうにもならないですわよ! ならないわよね?」
刺さる。刺さる。選ばれし子ども一行からの視線が羅々に刺さる。
高貴なる人間である彼女。普段ならば一介の市民の抗議など蚊の鳴く声にしか聞こえず「現場でなんとかして」などと返すのだろうが――状況が状況である。
「わかりましたー! 責任を持って、私とパートナー達でなんとかするわよ!」
羅々は非を認めるばかりか、この場を収めてみせると宣言までした。タツキ達にとっては後者の方がずっと驚きだった。
選ばれし子どもの先輩。羅々はそう言った。後輩である自分達は手も足も出なかったというのに、羅々はどれほど先まで進んでいるのか?
「最初の20体は引き続き、新人の皆様にお任せしますわ」
リーダー以外どれが最初にいた個体か見分けがつかないのはさておき、20体なら何とかなりそうな気がする。
では、残りの80体を羅々はどうするつもりなのか。
「残りはこちらで引き受けましょう」
羅々がパチンと指を鳴らす。それは合図。
刹那に起こる風、目にも留まらぬ速さで“彼女”は現れた。
「やっぱり私達が必要になったのね、羅々!」
歌うような声を追うように彼女を探す。声の発生源は既に近くまで迫っている。そして皆の視線が一斉に同じ場所――羅々のいる方へ集まる。
少女のかたちをした小人が、羅々の周囲で舞うように飛び回っていた。
「妖精さんみたいだね~」
マチが場違いにのんきな感想を呟いた。しかし、場違いではあれど的外れではない。デジモンという存在の知識が無ければ、人は彼女を「妖精」と称するだろう。
彼女の体長はなんと、わずか15~30cmほど。ちょうど羅々の顔の隣に並んだ事で、その小ささが際立つ。
戦闘種族らしく上半身は若草色のアーマーで武装していて、丸い肩アーマーからは矢羽が左右三本ずつ飛び出している。籠手がまるで弓と一体化しているかのような形状なので、ここから射出するのだろう。
脇腹からもなんと、洋弓の弓幹が飛び出している。
彼女自身が巨大な弓と言えばいいのだろうか。とにかく、射手としての性質が色濃いデジモンのようだ。
ちょこんと被った三角帽子と、スカートから伸びる華奢な足が、妖精らしい愛らしさと牧歌的なイメージを担保していた。
スカートの中からは細い尻尾のようなものが伸びているが、尾の先には 妖精は尻尾も特別製なのだろうか。
「もう狩りを始めてもいいのよね! 80匹も獲物を用意してくれるなんて、今日の羅々は太っ腹ね!」
「ガチの狩りはダメよ。生きたままキャッチで後からリリースですわ。それと、貴女の紹介をしたいからもう少しだけ待ちなさい」
愛らしい妖精から物騒な発言が飛び出した。妖精もデジモンナイズドされれば凶暴になるのかと、子ども達は唖然とする。
妖精を窘める羅々だが、驚愕の色を帯びた視線に気づいて、妖精に前に出るよう促した。
羅々自身の自己紹介と同じくらいに意気揚々と声を張り上げ、羅々は妖精の名を告げる。
「ご紹介いたしますわ! 彼女は私のパートナーデジモン。名前はダリア! 種族はザミエールモンよ」
羅々に紹介されて、ダリアと呼ばれたデジモンは空中でくるり横に一回転。ふわりと浮かんだスカートの裾を持ち上げ、ぺこりとお辞儀をしてみせる。
「選ばれし子どものみんな、初めまして! 本当は初めましてじゃないんだけど、さっきは目隠しさせてもらったから、やっぱり初めましてね!」
目隠し、と聞いてタツキはピンと来た。自分達を公園に拉致? したのは――
いや待て、さっき自分を担ぎ上げた存在は、少なくとも人間サイズだった筈だ。妖精サイズのダリアは該当しない筈だ。タツキの中に大きな謎が増える。
「ザミエールモン!? ティンカーモンじゃなくて? 図鑑で見たのとはちょっと、違うような……」
ザミエールモンというデジモンを知っているらしい陽は、タツキとは別の視点で驚いていた。
「通常個体よりもプリティーでしょう? 特別な私のパートナーなので、特別可愛くチューンアップしてあるの」
羅々は自慢げに腕を組んで胸を張る。彼女にとって自慢のパートナー、対ゴキモン戦の切り札。それがダリアだったのだ。
ダリアの外見に関して何やら重要なヒントを出してくれたようだがしかし。
「ほら、図鑑と全然違う」
「ほんまやん! つーか図鑑のザミエールモン男やんけ!」
「あの、デジモンに人間で言う性別は無くて……」
「男やんけ! ただの女体化じゃなくて服も髪質も顔つきも全てがちゃうやんけ!」
誰ももう羅々を見ておらず、どこからともなく取り出された図鑑とダリアを一生懸命見比べていた。
「そだよ! 僕らは用途に合わせて品種改良されてるんだ!」
「うわぁ!? だ、誰!?」
タツキはギョッとして飛びのいた。誰のものかも分からない声が、自分のすぐ耳元から聞こえてきたせいだ。
「僕はクリスタル! 雪上活動用白変個体だよ、よろしくね!」
今度は声変わり前の少年の声で喋る小人。ダリアとは違って彼の鎧は図鑑のザミエールモンと同じデザインだが、色は名前のイメージ通り淡い水色。
顔つきも幼さが残る――ダリアと同年代の少年に見えた。
「品種“改良”に該当するかは貴様の努力次第だがな」
「うわぁまた出た」
三番目に現れたザミエールモン。今度もタツキの真横に現れたが、二度目ともなれば過剰に驚く事はなかった。
今度は声が低い。大人びた個体だ。
鎧が青い事以外は前二体に比べるとずっと原種に近いが、メカニカルに改造された巨大な矢を二本も背負っている。
「彼はジェスト! 世界で二番目に強いザミエールモンですわ!」
「今回は新人二匹の教育係として来ている。本気を出すつもりは無い。もし俺の手出しが必要になったらその時は、分かっているだろうな」
ジェストと呼ばれたザミエールモンがダリア、クリスタルを睨みつけた。「鬼教官」の呼び名が相応しい、恐ろしく険しいオーラを纏っている。無関係のタツキまで刃を突きつけられているような気になった。
「はいはーい」
「大丈夫だってジェストー」
当のダリアとクリスタルはどこ吹く風。説教を面倒くさそうに流す子どもそのものだ。鬼教官に対する不届きな態度が寧ろ、得体の知れない恐ろしさを醸し出していた。
それにしても、「世界で二番目」ときた。これが「世界で一番」だったら、定番の謳い文句に聞こえるが、あえて二番目と言われると信憑性が出てくる、気がする。
「あわわわわ、ザミエールモンが、三体も……」
陽はザミエールモンの襲来を前に目を回して今にもふらりと倒れそうだ。
陽と同等か或いはそれ以上に、ゴキモン達も慌てふためいていた。
「聞いた事があるぞ、ザミエールモン。確か、木精軍団っつーのを率いてる将軍だ」
「究極体らしいぞ」
「かみさま……」
究極体。得たばかりの知識によれば、デジモンの成長段階における最上位。成長期がなんだ成熟期がなんだという議論を遥か置き去りにする、雲の上の存在だ。
今までタツキ達が出会ったデジモンの中では、セラフィモンが該当する。あのセラフィモンと同格、と考えるとゴキモンの怯えっぷりにも頷ける。もっとも、究極体もピンからキリまでいるようだが。
「正式なパートナーはダリアだけですわ。ジェストとクリスタルはそうね、ダリアが属する群れの仲間で協力してもらっている、って感じかしら」
どうやらタツキのようにパートナーが複数体いる、という事ではないようだ。
それでも、パートナーが究極体である事には変わりない。今のタツキ達からすれば、先輩どころか先生よりも更に上の存在。頼もしさ以上に、逆らえない恐ろしさがあった。
「じゃあ、俺が成長期たち担当しますね……」
「それなら僕が」
「いやおいどんが」
「お黙り! 早い者勝ちで最初にいた20体があの子達の相手をしてって言ってるの! 残りは順番にふん縛っていくから」
楽な方へと流れていくゴキモンをぴしゃりと一喝。最初にゴキモンの群れを移動させたように、強引に群れを仕切ってゴキモンを80匹と20匹に分けた。
「じゃ、こっちのグループは預かりますわ」
タツキ達としてはいくらでも敵が少ない方がいい。羅々の助け舟が今は何よりもありがたい。
だが。
「おい、待てよ」
ここでもまた、村正が怒気を孕ませ待ったをかける。
「100匹の雑魚がなんだってんだ。」
羅々の目つきがふっと冷たくなる。
それは生まれつきのつり目のせいではなく、明確に冷徹な態度を露わにしている。
「さっきから貴方、ご自身の実力を過信しているようですが……。根拠の無い自信に付き合って差し上げるほど、私は優しい先輩ではなくってよ」
羅々の呼吸に合わせるように、三体のザミエールモンが村正の前に立ち塞がる。ザミエールモンの主武装である、手甲と一体化した弓を構えて。
一触即発の空気。ゴキモンと対峙した時よりも、遥かに重苦しい空気が各々の肺を圧し潰す。
「まあまあ。もしかしたら何か事情があるのかもしれねえし」
殺気立つ羅々をなだめようと、何故かゴキモンのリーダーが仲裁に入ってくれた。
だが残念ながら、羅々も村正もゴキモンリーダーの仲裁など意に介さない。これにはリーダーもしょんぼりしてしまう。
その時だ。
「ターーーーーーーイム!!」
突然、誰もがびくりと驚く勢いで愛一好が声を張り上げる。
「タイム! タイムですタイムで~す! ホームに引っ込みます!」
愛一好は叫び続けながら、相変わらず人間離れしたスピードで村正に接近。火を噴く竹刀を恐れる事なく彼を捕まえ小脇に抱えた。
そのまま駅に向かって猛ダッシュ。文字通りの脱兎の如く、愛一好と村正は戦線を離脱した。
「え、あ、待ってください愛一好さん!」
展開に追いつけないなりに、タツキ達は急いで愛一好を追いかける。
ゴキモン達は呆然と、羅々とザミエールモンは敢えて、逃げる子ども達を見送った。
「よくぞこの私の前で敵前逃亡できましたこと。まあ、彼女なりの考えがあってのことなのでしょう。許します」
羅々は寛容なようでいて、しかしその実傲慢な態度で愛一好の逃亡を見逃す。
「じゃあ、こちらは引き続き80匹ゴキちゃんをふん縛っておきますわね」
「おやびん助けてー!!」
この時、ゴキモンを捕らえようとするザミエールモン達が、悪魔のように凶悪な笑みを浮かべていたのだが、タツキの視点からは見えなかった。
◇◇
今度は逆に駅舎に近づき、建物の陰に隠れる。羅々にもゴキモンにも見えない場所に腰を落ち着け、全力疾走で上がった息を皆で整える。
息切れが落ち着くのを待たぬまま、タツキは愛一好に頭を下げた。
「愛一好さん、ありがとうございます」
状況を一度リセットし、皆の頭が覚めるよう取り計らってくれた事がタツキにはありがたかった。
「いいって事よん。それよりもまっさんだよ、まっさん」
いつの間に村正をあだ名で呼ぶようになったんだ、と聞ける雰囲気ではなかった。
「なして? なしてあんなに怒ってたん?」
「なしてなん?」
愛一好が気遣いかは知らないが、軽くふざけた調子で問う。跳兎もそれに追従する。
村正は無言だった。「お前らには関係ねえだろ」という言い分を、無言を貫く事で主張している。
「だんまりかい? 言わないなら言うまで踊るで? おん?」
村正は顔を背けて何も言わない。
だから、愛一好は本当に踊った。村正はそれでも無言だった。いたたまれなくなってきたのか、愛一好は自らすぐに踊るのをやめた。
これを見せられたタツキもマチも、いたたまれない気持ちになった。
「言いたくないのは分かったけど、それはそれとして一人で死地に突っ込まれると困るやで」
「やで」
二回目の「やで」は愛一好の語尾を真似した跳兎だ。
「困ればいいだろ」
「8歳児みたいな言い方しおってからに」
愛一好が何を言おうと、村正には響かない。強情もここまで来れば大したものだ。
タツキも一向に口を割らない村正に業を煮やし、愛一好を制して村正の正面に立つ。
しゃがんで村正と視線を合わせ、半ば懇願するように、村正の真意を問う。
「なあ、村正、頼むよ。どうして 直せとは言わないからさ、せめて教えてくれ」
パートナーのタツキが訊ねたからだろうか。それとも、「俺が聞かなければ」というタツキの姿勢を評価したがためか、村正はぽつりぽつりと胸中を語り始めた。
◇
そう遠い昔の話ではない。デジタルワールドのとある場所に、力自慢のボルトモンがいた。
究極の頂に上り詰めるまで磨き上げた筋肉と、剛腕で振るう斧が誇りだった。
そしてボルトモンには、相棒のクズハモンがいた。陰陽術と管狐を操る、巫女のデジモンだ。
ボルトモンは決して口にはしなかったが、彼女は頼もしい奴で、力任せで視野が狭くなりがちなボルトモンを的確にサポートしてくれた。
クズハモンはサクヤモンの成り損ないとも言われるが、ボルトモンはそのようには思えなかった。
二人が揃えば、並大抵の相手には負けない。だが、この日は少し、油断してしまった。
「んだよパラサイモンか。雑魚中のザコじゃねえか」
一つ目の虫のようなデジモンを見下ろすボルトモン。パラサイモンは、大きな緑色の瞳をふるふると震えさせるばかりで何もしてこない。
いや、究極体でありながら他者に寄生しなければ戦えないパラサイモンは、究極体2体を相手に何もできないのだ。
「油断しないで、ボルトモン。どんな隠し玉を持っているか分からないわ」
「へいへい分かりましたよー」
クズハモンの忠告に生返事をするボルトモン。
ボルトモンが相手を侮る発言をして、クズハモンがどんな相手だとしても油断するなと返す。これ自体がお決まりの流れになっていた。
だから、クズハモン自身も口に出すだけで真に警戒をしていなかった、のかもしれない。
「おいクズハモン、足」
「やだ、私に寄生しようとしてるの?」
パラサイモンは触手をクズハモンの足に向かって伸ばす。一か八か、クズハモンに寄生して逆転を狙っているのだろうか。
しかし、見え見えの行動は意味を成さない。ボルトモンはパラサイモンの触手に向かって斧を振り下ろした。
この時、ボルトモンの意識は完全にパラサイモンだけに向かっていた。それが敗因だ。
「ボルトモン! 後――」
クズハモンが叫ぶ声を、ボルトモンの胸を貫く銃声がかき消した。
ボルトモンが見たものは、パラサイモンの触手を断ち切った勢いで地面に刺さった斧。そして、自分自身の胸から流れ出して斧を汚す鮮血(データ)――
「ボルトモン! ボルトモン!」
ぐわんぐわんと揺れる頭の中で、クズハモンが自分を呼ぶ声が乱反射する、そんな感覚がする。
傷の痛みよりも血(データ)の流失で意識が朦朧とする感覚の方が、ずっと強い。
「人が機嫌悪い時にギャアギャアうるせえんだよ、雑魚がよ」
知らないデジモンの声も、クズハモンの声と一緒に脳みその中をぐるぐる回る。
こいつこそが自分を撃ったデジモンだと、ボルトモンは確信できた。
究極体の自分を雑魚扱い。実際に胸を撃ち抜けているという事は、恐らく相手も究極体だろう。
今振り向けば姿を拝めるだろうが、ボルトモンにはそれができなかった。少しでも体を動かして姿勢を変えれば、そのままぐらりと倒れそうだった。
「そっちのクズハモンもギャーギャーうるせえなあ! 二匹まとめて食ってやろうか」
馬鹿な事言ってんじゃねえぞ。てめえこそ俺の斧の錆にしてやろうか、雑魚が。
それを実際口に出せたのか、ボルトモンには分からない。不明瞭な意識ではもう、自分の状況を理解する事さえおぼつかない。
そう言えば体が冷たい事に気がついて、その冷たさが地面から伝わっている事に気がついて、倒れそうも何も既に倒れている事に気がついて――気がつけば意識も消えていた。
◇
「目が覚めた時、俺は割れたタマゴの殻の中にいた」
訳も分からないまま殻の外に這い出て、周りを見渡してそこが「はじまりの町」だって事に気づいて、やっと自分が生まれたての幼年期だって事に気が付いた。
俺はあそこで死んで、“前世の記憶を持ったまま”デジタマに還ったんだ。
「ジジモン様から“前世の記憶を持ったデジモン”の話は聞いたことがあったけど、まさか実在していたなんて……」
陽が動揺を隠せない様子で呟いた。
村正は構わず続ける。
周りの保護者(おとな)は誰もクズハモンを知らなかった。赤ん坊の癖に大人のようにべらべら喋る俺を見て、怪訝な顔をするだけだ。
仮にも究極体のあいつが知られていないという事は、相当遠くの町に転生してしまったんだろう。お前らも幼年期のデジモン――コロナモンやルナモンに進化する前のこいつらの姿を見ただろ? 手も足も無いあの身体じゃ、クズハモンを探して旅に出るなんて夢のまた夢だ。
クズハモンだけじゃない。俺は俺の全てを失ったも同然だ。力自慢の奴が力を奪われたら、そこに何が残る? 何も無いだろ。
殺されて赤ん坊の身体にぶち込まれて、究極体になるまで鍛えた時間も全部パー。
今だって、斧よりずっと軽い筈の竹刀も満足に振れやしない。
「選ばれし子ども計画も別に乗り気じゃなかった。セラフィモンと、俺が生まれ変わった町の長から頼まれたから来てやっただけだ」
天使と悪魔の戦争なんてどうでも良かった。今は尚更それどころじゃねえってのに、あいつら俺の気持ちなんか気にしちゃいねえ。
セラフィモンの意向かは知らないが、集められたのはガキのデジモンばかり。こいつらと同レベルに扱われるのは癪だし、人間のガキを頼らにゃならんのは気に食わなかったが、究極体になったこの俺が戦いの役に立たん奴と思われる方がもっと癪だった。
セラフィモンに言われるままパートナーを探しに行って、その先でデビドラモンに勝てた時はもしやと思ったんだが――
「その結果がこのザマだ。そこらの成熟期にすら俺一人じゃ勝てず、横から現れた究極体にお株を奪われ、挙句人間のガキから説教までされて最悪だよクソったれ」
タツキは言葉を失った。
タツキが村正に手を貸したいと思ったのは、抑圧に反抗する自分と重なる部分があると感じたからだ。
お前は無力と嘲られようと、己の無力を思い知らされようと、それでもデビドラモンに立ち向かった村正に希望を見出したからだ。
だが、実際に村正を抑えつけていたものの正体は、人間の子ども風情が安易に共感できるものではなかった。
自分の思うように動けないどころか、消えたのだ。自分そのものが。
「まっさんにはまっさんなりの訳があると思ってたけど、そう来たかぁ……。そりゃ、私らと同列扱いは癪だわね」
愛一好の言う通りだ。
仮に今の自分が心はそのままに赤ん坊に生まれ変わり、剣崎勇夜がいない場所で、周りの赤ん坊と同じサッカーも剣道もできない無力な存在として扱われたら? きっと「絶望」の一言では済まないだろう。
そしてそれが、プロとして栄光を掴んだ後に起こったら……?
タツキだけではない。未だ発達途上の子ども達は、村正に「同情」は出来ても真の意味での「共感」は許されないように思えて、これ以上彼に何も言葉を掛けられない
掛けられない――?
「ネコパンチ!」
「ふぎゃー!?」
なんと、前触れなく放たれたクラリネの必殺拳が、村正の顔面に命中した。
面越しとはいえモロに食らってしまった村正は、衝撃に悶絶している。
「何しやがるバカ猫!」
「なんで、なんで言ってくれなかったの!? はずかしかったの?」
「恥ずかしいどころかそれを超越した感情だわ! イテテ……」
クラリネはパンチだけでは飽き足らず、村正の肩を掴んで前後に揺さぶった。
そして、思いの丈を半泣きで叫ぶ。
「はずかしくたって進化したいのはみんな同じだもん! 進化したくて、みんなでいっしょにがんばってるの! 村正もいっしょにがんばろうよ!」
「てめえと一緒にすんなバカ猫……チッ、そういう事かよ畜生」
村正は一度振り上げた筈の拳を、何かに気がついた途端に下ろす。
タツキはクラリネの言葉に目が覚めるような衝撃を受け、それからセラフィモンの言葉を思い出した。
『彼女の進化に関するデータには異常がある。彼女は、完全体にはなれないようだ』
クラリネも村正と事情は違えど、「進化したくてもできない」デジモンだ。
故に、村正の境遇に一層同情でき、彼の態度に一層腹が立ったのだろう。
クラリネがここまで感情を表すのは、デビドラモンとの戦いで協力を請われた時以来だ。
パートナーなら。
デジモンに戦ってもらう代わりに「気持ち」を提供するのがパートナーなら、もう一人のパートナーがそうしたように、自分も村正に向き合うのが誠意だろう。
タツキは覚悟を決めた。
「悪い村正。俺、勝手にお前がどんな気持ちかとか、気持ちの重さとか、勝手に決めつけてた」
「何だよお前まで急に……怖っ」
タツキはまず、村正に向かって謝った。
タツキはまだ、自分と村正を重ねて見ていたと告白していない。だから、この謝罪の真意までは村正には分からない。
だが、タツキはここで謝罪をしなければ村正に向き合えないと思った。
村正のふざけた態度は、この話題から逃げたい気持ちの裏返し。だが、ここでタツキまで引き下がっては意味が無い。
「強さがリセットされたのも嫌だろうけどさ。今まですっげえ優秀な仲間がいたのに、俺みたいなのが急に現れて、パートナーだって言われたのはもっと嫌だったと思う」
突然現れたパートナーは村正とクラリネではなく、タツキの方だったのだと、認識を改めた事も村正に告げる。告げなければならないと思った。
「俺たちはその、クズハモン? みたいに完璧なサポートはできない。だけど、それでも……」
事実として、タツキの悩みは村正の境遇に比べれば矮小なものだ。
だが、それを理由に一線を引いてしまうのは、村正に悪いとかそれ以前に――
「お前が一人で戦って、結局力を取り戻せなかったってオチになるのは、嫌だ」
何かに負けたようで、嫌だったのだ。
だから、引き続き対等に振る舞うことにした。同じ「反骨精神」の持ち主として。
「そうだよ! いや、そうです、よ? 村正……さんは『全部失った』と言いましたが、究極体に至るまでに得た知識は絶対に役に立ちます! 『筈』じゃなくて、絶対立ちます……立つよ?」
陽も続けて必死に訴えかける……が、妙な突っかかりがある。
村正の精神は究極体相当と聞いてから、敬語で喋るべきか同期としてため口を使い続けるか、迷い始めた様子だ。
「じゃあ、これからは敬語で頼むわ」
「分かりました。では、これからは敬語で」
敬語を使わせるんかい。と危うく突っ込みそうになったが、「陽の気質を考えると寧ろ敬語の方が話しやすいだろう」という気遣いと気づいて飲み込む。
「だから僕としてはその、あなたに“何も無い”とは思わないし、あなたの知恵を貸してほしい、です」
陽は頭をぺこりと下げた。
「そうだよ~。マチ達こそ戦場では赤ちゃんみたいなものだから~、先輩の力が必要なんだよ~」
マチも陽に続いて村正の前に。しゃがんで視線を合わせ、じっくりと村正の目を見つめる。
「その代わりめっちゃ協力するよ~。めっちゃ協力するからさ~、ね~?」
マチはゆっくり目を開け、穏やかに首を傾けて、柔らかさの中に一本通った芯、「真摯」な気持ちを声に乗せる。
村正は沈黙した。それはそれは永い沈黙。実際の長さはそれほどでは無かったのかもしれないが、実感としては日が暮れてしまうと感じるほどの永い沈黙。
やっと村正が口を開いたと思えば――
「…………めーーーーんどくせーガキどもだなぁ~~~」
この憎まれ口である。
「わぁーった。わぁーったよ足並み揃えりゃいいんだろ。へーへー分かりましたよ。だから終わり! この小っ恥ずかしい告白タイム終わり! 受け付け終了!」
「な、なんだとぉ……愛一好さんは今、超エモーショナルな言葉を考えていた真っ最中なんだぞぉ? まだ思いついてなかったけど」
「だってお前に喋らすと絶対クソ長い上に一番意味不明な事言い出すだろ」
投げやりに言論封殺され、愛一好はわなわなと震えている。
愛一好だけではなく、誰もが「ここまで言ったのに、こいつ……」と呆れと苛立ちを隠せない。
「正直お前らと仲良しこよしで戦うよりも、告白タイムに付き合う方が嫌だよもー。で、俺を大人しくさせたところでどうすんだよ。俺が言うのもなんだけど、マイナスがゼロになっただけだろ。何かアイデアあんのかよ」
村正の言う通りだ。「村正が言う事を聞かない」は問題ではあっても本題ではない。
「まっさんの言う通りだ」
「うさぴょん?」
愛一好を真似た口調で地の文と同じ言葉を繰り返す兎が一羽。
「問題は……どうやってゴキモンを倒すのかだよ」
どやりどやりと問題提起したのは、さっきまでだんまりを決め込んでいた跳兎だ。先ほども同じような光景があった気がする。
「やっぱり進化でしょうか?」
「デビドラモンを倒した時みたいに~、ムシャモンの刀でズババ~ンと~」
マチが刀を振るジェスチャーをしてみせる。どちらかと言うと、野球のバットをスイングしているように見えるが。
そして皆の視線は再び村正に向けられる。しかし今度は「彼ならやってくれるかもしれない」という期待の眼差しだ。
「やっぱここは、皆の先輩まっさんでしょ。一人で突っ走るなと言ったのはこっちだけど、真実を知っちゃあ村正おじさんに希望を託さずにいられない。ここはムシャモン? のパワーで一発……」
「タイマンならともかく、俺だけ進化しても頭数の問題は解決できねえだろ。20匹も同時に襲って来られたらどうすんだ」
村正からの提案に、皆が「きょとん」とする。
提案の内容は問題ではない。寧ろ真っ当な提案だ。
先ほどまで一人で戦うつもりだった村正が、渋々足並みを揃える素振りを見せた村正が、「自分一人では足りない」と「自ら」申し出た事が驚きなのだ。
タツキ達は顔を見合わせて、しかし敢えて口には出さず、村正の変化を受け入れる。
「そうねん。でも、今進化できるのってまっさんだけなんでしょ? 賭けるか、うさぴょんが進化する“可能性”に」
「どやうさ……」
「何週間かかるんだよ」
「イラうさ……」
跳兎は引きつった笑顔で圧を放つが村正は気にしない。
「あれ使えばいいだろ。光のデジメンタル」
◇
「あら。いい顔になって戻ってきましたわね」
「俺達は戻ってくるって信じてたぞ!」
晴れやかな顔で戻ってきた選ばれし子どもを見て、羅々は「ふっ」と口角を上げた。
何故かゴキモンのリーダーまでもが、熱烈に迎え入れてくれた。
ザミエールモン達が担当したゴキモン達は当の昔に制圧されていた。目を回して気絶した状態で簀巻きにされている。妖精サイズのザミエールモンが、どうやって人間サイズのゴキモンを簀巻きにしたのだろう?
「なんでジェストだけで半分も狩っちゃったんだよーっ! 僕とダリアの取り分が20匹ずつになっちゃったじゃん!」
「そうよ! 成熟期20匹生け捕りにしたって何にも面白くないわ!」
「お前らがトロ過ぎるのが悪い」
なぜかザミエールモン同士で喧嘩をしていた。
速いゴキモンを捕らえる技術自体が驚異的だが、一体ジェストが若い二体要求した水準はどれほどのものなのだろうか。
「見つけたんだな。俺達に、一矢報いる方法を……!」
「一矢で済ます訳ないだろ、ゴミ虫」
すっかり熱血教師と化しているゴキモンリーダーを、村正は冷たく突き放す。
当のゴキモンは「ゴミムシだと違う虫になっちゃうだろ!」とワードチョイスの方に憤慨しているが。
「……行くぞ。村正、クラリネ」
タツキはデジヴァイスを掲げた。デジモンと初めて出会った、あの日のように。
村正も竹刀を構えて前に出る。ただし、その隣にはあの日と違ってクラリネも、共に。
デジヴァイスを握る手に力が入る。力の中に心を籠める。
思う心はパートナーと同じ。次のステップに、進化する――
まず変化したのは村正。竹刀は本物の刃に、防具は朱い具足に、そして肉体は戦を重ねた流浪の武者へと変わっていく。村正が前世で重ねてきた戦いの歴史を、新たな肉体に改めて刻んでいくかのように。
ここにいるのはスポーツとしての武道を修めた者ではない。本物の修羅場を知る、武芸者だ。
続いて取り出したのは光のデジメンタル。今一度デジヴァイスを操作し、デジメンタルの力がクラリネへ注がれるようにと調整する。
「デジメンタル、アップ!」
教わった通りの呪文を唱えると、卵型の秘宝の中から光が孵化した。
孵化した光はクラリネの身体を「白い獣」の姿はそのままに成長させていく。クラリネは小さな子猫のかたちから、しなやかさと力強さを体現する雌獅子への「進化」を果たす。
卵の殻の役割もまだ終わらない。デジメンタルは光を放出するとパーツごとに分解され、クラリネと共に成長して彼女を覆う鎧と化した。
新たなる姿を手にしたクラリネの心の高揚を表すように、背から純白の翼が広がり彼女は今、新生を果たす。
「テイルモン進化! ネフェルティモン!」
クラリネは新たなる姿の名を高らかに叫んだ。
ネフェルティティ。古代エジプトに存在したファラオの王妃の名。そしてネフェルティモンの姿はまるでスフィンクス――タツキ達もよく知る、神王を守護する聖獣の姿をしていた。
「ひ、光のデジメンタルだってぇ!?」
総勢20名のゴキモンが、何の合図も無しに声を合わせて叫んだ。
「お、お前らザミエールモンは連れてるわ光のデジメンタルは持ってるわ、一体何者なんだ」
タツキはただ「秘宝」とだけ聞かされていたが――デジメンタルがデジタルワールドにおいてどれほど価値のある秘宝なのか。ゴキモンの反応で初めて実感を得る。
「生きてる内にデジメンタル見れるなんて驚きだよ兄貴ぃ」
「大丈夫。ザミエールモンを相手するよか怖くない」
そう言うゴキモンのリーダーの声は震えていた。
(な、なんだこいつは! 成熟期に進化したばかりとは思えねえ。寧ろ、成熟期の身体の方に慣れて……いや、これも違う。まるで、「経験と知識に身体が追いついてきた」みてえな……)
リーダーの名は伊達ではない。リーダーは、真相までは分からずとも村正の本質を見抜いた。
デジメンタルで進化したクラリネともども、ゴキモンの中で警戒度が跳ね上がる。
進化した体でどう出るか?
村正は敵味方双方の状況を見比べ、何かを確かめるつもりでクラリネに向かってこう言った。
「おい、猫。俺乗せて飛べるか」
村正からの唐突な申し出に驚き、クラリネは村正を二度見する。
「ごめんわかんない! まだ飛んだことないから!」
「そりゃそうか。じゃあ適当に飛んでろ。続きはそれから考える」
「にゃご……うん、分かった!」
クラリネは仮面の下で少し困った素振りを見せたが、しかしすぐに迷いを振り切り頷いた。
ばさり、と純白の翼をはばたかせる。クラリネの四肢が地面を離れ、彼女は宙へ浮かんだ。
「すごーい! わたし、飛んでる!」
過疎地とはいえ、近代化した日本の駅前には不釣り合いな神秘の光景。
誰よりもクラリネ自身が彼女の新たな力に目を輝かせていて、ゴキモンの事も忘れて彼女は空を舞う楽しさに夢中になった。
やがて高度は周囲の建物を超え、単なるジャンプでは届かない高度に到達する。
「そうだろう。空を飛ぶのは楽しいだろう。なんたって、俺達ゴキモンブラザーズも空を飛ぶのは大好きさ!」
そう。ゴキブリのデジモンならば、空を飛べない方が不自然。ゴキモン達もまた、クラリネに追随するようにドクロマーク付きの翅を震わせ空を飛んだ。
ビッグサイズのゴキブリ総勢20体が生み出す羽音で、選ばれし子ども達に過去一番の鳥肌が立った。
「わあ! そっか、みんなも飛べるんだ」
クラリネははっと、自分が今戦っている事を思い出した。
自身の後を追って飛ぶゴキモンを躱そうと、試しに旋回してみる。
景色がぐるりと巡り感動したが、旋回自体は成功してもゴキモンはついて来る事に気付いていよいよ焦り始める。
「どうしよ。えっとえっと、カースオブクイーン!」
クラリネは慌てて覚えたての新技を放つ。
デジコアに刻まれた手順に従い力を解放すると、額から赤色のビームが発射された。
「おっと危ねえ!」
しかし、ゴキモンは空中でも変わらぬ身軽さを発揮しビームを躱す。
当たらなかったビームはどうなったのかというと、そのまま真っ直ぐ進み続けて、のんびり観戦中の羅々の隣に着弾。地面に直径30cmほどの穴を開けた。
「マジですの?」
誰もが驚く羅々に構ってはいられない。
こうしている間にも、空中戦は進行しているのだ。
「ロゼッタストーン!」
今度はなんと、古代の文字が書かれた石板が発射される。よく学校の校庭等に置かれている記念碑と同程度の大きさ、つまりかなり大きめの石板だ。
予想外の飛来物に慄くもゴキモンは難なく躱し、やはり羅々の真隣に落下して地面に穴を開けた。
「だからマジですの?」
羅々はともかく、地面に穴を開けるほどの威力そのものはゴキモン達には無視できない。
「兄貴、あれ当たったら死なない?」
「ゴキモンの紙装甲をこれほど恨んだ日は無いぜ……ならば取る作戦は一つ!」
ゴキモンリーダーは目の前を飛び続けるクラリネに向かってビシィと指さした。
「先にテイル……じゃなくてネフェルティモンの嬢ちゃんを倒す! 嬢ちゃんはどうも新しい姿に慣れてねえようだ。空中戦なら俺らに分がある。嬢ちゃんを絶対地面に下ろすなよ!」
「オッス!」
何となくクラリネを追うだけだったゴキモンの群れに、一つの指向性が生まれる。クラリネが地面に下りられないよう、囲い込みを始めたのだ。
ここまで長く空中戦を強いられるとは思わなかったクラリネは困惑、混乱し、動きが鈍り始める。
「あれ、ちょっとまずくね陽っち?」
「(陽っち?)はい、このままだとゴキモンの狙いが全部クラリネさんに集中して……」
愛一好は睨むように、陽は恐れるように空を見上げる。
「しかも村正は飛べないから……」
「クラリネちゃんが~、一人でゴキモンと戦わないと~」
タツキもマチも、クラリネの身と勝敗の行方を案じている。
しかし、羅々率いるザミエールモンの見識は異なるようだ。
「敵は二匹いるというのに片方を放置するとは。作戦か? わざとか?」
「集中攻撃のつもりなのかしら?」
「獲物を自由に泳がせる狩りを楽しめるのは、狩人側が圧倒的有利な時だけなのにね」
(な、なんでそんなにボロクソに言うんですの?)
そして、村正の見識もザミエールモンと同じ。
「雑魚虫が。飛んだ程度で俺に勝てるかよ」
この勝負、村正の勝ち、だ。
「おい猫! 一旦こっち向かって降りてこい!」
村正がクラリネに向かって叫ぶも、クラリネは首を横に振る。
「ムリだよ! 下に行こうとすると、回り込まれちゃうの!」
「体当たりすりゃ突破できんだろ! 相手が多すぎる? あーもーしょーがねえなあ!」
村正は兜の下に手を突っ込み、頭をガリガリ掻きながら別の手を考える。村正を乗せて飛ぶのもダメなら、降りて戻って来るのもダメ。ならばどうするか。
「じゃあ、さっきの石、連射できるか! 何回も続けて出せるかって聞いてんだ!」
「やればできると思う!」
「よし! 虫どもに当てようとしなくていいから、俺がいる方に撃て!」
それを聞いて身構えたのは、ゴキモンの方だ。
「なんだってぇ!? 古今東西、『俺に向かって撃て』は勝利の布石と決まってんだ。お前ら二手に分かれるぞ!」
一斉にクラリネを追いかけていたゴキモンの群れが、それぞれ約10体ずつに分裂する。
「半分は坊主を止めに行け! もう半分は俺と一緒に嬢ちゃんを捕まえるぞ!」
「ラジャー!」
軍団の片割れは一斉に踵を返し、村正がいる方へと向かっていく。半減したとは言え、数の差は1対10と圧倒的。村正自身が挙げた「数の差」は克服できていない。
「ラッキー」
しかし村正は表情一つ変えなかった。
ただ「幸運だ」と呟いて、ゴキモンの襲来を待ち構えている。
一方、クラリネはというと。
「きゃー! ロゼッタストーン! いっぱい発射!」
迫りくるゴキモンから必死に逃げながら、村正の指示だけは果たせるよう何発か石版を放つ。
しかし、苦し紛れの攻撃は当然ゴキモンを狙えるほどの精度は無く、村正の指示通りに彼へ向かって飛ばせた石版は放った内のたった1、2個だ。
「捕まえたぜ嬢ちゃん!」
遂にゴキモンリーダーがクラリネに追いついた。
手足に叩き落とされないように、かつクラリネのはばたきを阻害できるように背中側から彼女にしがみつこうとする。
クラリネは大きくなった体躯と何より自身の翼が仇となり、ゴキモンを視界に捉えきれず反応が遅れてしまった。
「終わったな」
と呆れて言ったのは、地上で見守っているジェストだ。
そして場面は再び村正視点へ戻る。
「あの下手くそにビーム撃たせて誤射でもされたら世話ねえよ。そもそもだな。確かに『俺だけの』目標なら当然、全軍撃破だがよ」
今まで無表情を貫いていた村正が、ぎろりと天を睨んだ。その先にはクラリネに追いつきそうなゴキモンリーダーがいる。
「『俺ら』で勝つんなら、全軍撃破なんてムダな事してる余裕なんざねえよ」
集団の先頭を飛ぶゴキモンが村正に肉薄する。互いの間合いに入る距離、どちらが一手繰り出すのが先か――というタイミングで、村正の姿が消えた。正確には、ゴキモンの視界から外れてどこかへ移動した。
行先はゴキモンの完全なる死角。ゴキモンの頭上である。
「ほげっ」
ゴキモンから短い悲鳴が漏れた。
村正はゴキモンが接近するタイミングを見計らい、ゴキモンの頭上を目掛けて跳躍。ゴキモンに飛び乗るばかりか勢いを殺さぬよう踏み台にして、更に天高く跳び上がったのだ。
次に目指す先は列の二番目のゴキモン。
「ぐえっ」
二番目のゴキモンを踏み越えたら、次は三番目のゴキモン。
「ふぐ!」
目の覚めるような大立ち回りを一息に、否、一息に決めなければいけないからこその大立ち回り。村正は次から次へとゴキモンに飛び乗っていく。
ゴキモンは横並びに同じ速さで飛んでいる訳ではない。個々の速さに応じて群れは自然と縦長になる。ゴキモンを踏み台に跳び上がり続ける事で、村正は天へと駆け上ろうとしているのだ。
「義経だ! 壇ノ浦の八艘跳びだ!」
愛一好が叫んだ。今の村正の動きは正に、八艘の舟に飛び移る義経が如し。
人間の武士が出来るならば、デジモンの武士が出来ない道理はなく。進化により向上した身体能力を全力で発揮し、包囲網からの脱出を敢行する。
「ふぎっ」
10体目の頭を踏み超えた。しかし、未だ道半ば。クラリネを追う集団には届かない。
そこへ飛んで来たのが、先ほどクラリネが苦し紛れに飛ばしたロゼッタストーン。ガシャリと具足を鳴らしてロゼッタストーンへ飛び乗り、更に上空へ向かって跳んだ。
そして、遂に集団の最後尾に肉薄。そこから再びゴキモンの階段を駆け上がる。
「マジかい」
ゴキモンリーダーの口が自然に武者震いと同類の薄ら笑いを
そして気付けば村正とゴキモンリーダーの視点は同じ高さに――村正は踏み台を駆使した跳躍のみで、空を飛ぶゴキモンリーダーに追いついた。
リーダーがクラリネを捕まえるのが先か。村正がリーダーに手を出すのが先か。どちらでもいい。村正の目的はゴキモンリーダーを掴んで地面に引きずり下ろす事だ。
結果として、村正がリーダーの腕を一本掴むのが早かった。ゴキモンの翅では鎧武者の重さを支えられず、二人は共に地面に向かって落下した。
「村正ーっ!」
息をもつかせぬ快進撃に子ども達の目が追いついたのは、村正とゴキモンが地面に到達した瞬間だ。
落下の衝撃で巻き起こった土煙が晴れ、その先にあった光景に注目が注がれる。
やっと決まった戦闘の行く末、タツキは早まる鼓動を感じながら恐る恐る確かめる。
二人は落下の後も生きていて――村正の刀「白鳥丸」の光る刀身が、ゴキモンリーダーの首元に添えられていた。
「お前ら、群れで生きるデジモンだよな。じゃあ、リーダーの首が取れれば全員に勝ったも同然だよな?」
「……見直したぜ、坊や。いや、ムシャモン!」
ゴキモンは抵抗する事なく、四本ある手を上に掲げた。
リーダーに倣い、19体全てのゴキモンは全員手を上げる。
「そして、俺達が落ちたら先回りしてクッションになりに来てくれたネフェルティモン」
「だって、そうしないと二人とも死んじゃうじゃん!」
落下地点にいたのは村正、ゴキモンリーダーの二人だけではなく――上空にいた筈のクラリネを含めた三人。
村正とリーダーが落下を始めた直後だ。
クラリネは二人が飛べずに落ちていると気がつくと、すぐに行動を開始した。
この日一番のスピードで地面に向かってはばたき、「相手が多すぎるから突破できない」と言っていたゴキモンの包囲網を力づくで突っ切り、墜落予想地点に先回りして二人を受け止めたのだ。
「デジタルワールドは弱肉強食だ。だが、あえて敵をも助けたという事は、強者の余裕がある証……。俺達ゴキモンブラザーズは、強者であるお前らに従い、エモい車は諦めよう」
こうして総勢100体のゴキモンは、全軍降伏した。
選ばれし子ども達の勝利である。
「あー、ちょっと待て。一つ訂正させろ」
「えっ、この流れで何かあるのか?」
格好つけて降伏宣言したつもりが村正に水を差され、ゴキモンリーダーは困惑する。
「俺は村正。こいつはクラリネって個体名があんだよ。これからは坊ちゃんでもコテモンでもムシャモンでもなくて、こう呼べ」
◇
「初任務は無事終了ですわ! 我が後輩、よく頑張りましたわね~!!」
羅々は選ばれし子ども達を泣きながら労う。一番の立役者である村正は「泣くほどの事じゃねえだろ」と少し引いていた。
「身体的ダメージを負ったのは、落下する方々を受け止めたクラリネさん(と、愛一好さんに蹴られたゴキモン)だけですわね。すぐに救護班を手配しますわ!」
言うが早いか、羅々は手続きのためにビュンと走ってその場を離れた。実に忙しないお嬢様である。
羅々がいなくなってしまったので、今度は子ども達自身が口々に村正とクラリネを褒め称え始めた。
「クラリネちゃん~。初めての進化なのに沢山頑張ってえらかったね~。最後に二人を助けたのもえらい、えらすぎるよ~」
「にゃ~ん。ごろにゃ~」
「同じライオンのデジモンとして、尊敬します! あれ、スフィンクスはライオンですよね……?」
クラリネの名付け親であるマチは、これでもかとクラリネを撫で回す。
クラリネはまだネフェルティモンのままだが、猫そのものの仕草で腹を上に向けて寝転がり、撫でられる喜びを表現している。銀の仮面のせいで分からないが、仮面の下では満面の笑みを浮かべている。
「村正! お前本当にすげえよ……!」
村正には当然、パートナーであるタツキが真っ先に声を掛けた。
「単に強いだけじゃない。状況から勝ち筋を見つけて、クラリネにも的確な指示を出して作戦を成功させるなんて、お前が持ってる戦いの経験値があってこそだよ」
「あの雑な作戦か? ありゃゴキモンが手加減してたから成功したんだ。結局あいつら、技の一つも使わなかったじゃねえか」
「でもでも、流石に八艘跳びもといゴキモン跳びは流石に連中驚いてたじゃん?」
「普段の俺ならあんな真似せんでも、斧投げてブチ当てて終わってたよ!」
何を言っても村正からはぶっきらぼうな謙遜しか返って来ず、タツキと愛一好は顔を合わせて苦笑した。
「逆に今回、僕たちは何もできなかったです。お二人だけに頑張ってもらって、不甲斐ない……」
「うさの必殺闇兎真拳(と書いてルナクローと読みます)も不発だったし、不覚!」
「だったらわたしも! わたしの攻撃は一回も当たってないよ!」
にわかに反省ムードが漂い始めると、羅々がビュンと戻って来て……。
「チーム戦なんだから誰かが勝ちゃあいいんですのよ! 次頑張れば良いんですわ!」
と言い残して再びビュンと走り去った。
「……ちゃん羅々もああ言ってるし、チームの勝利でいいじゃん? おめでとうタイム続行しようぜ?」
「おめうさ!」
そして再開される祝福ムード。
今にも村正の胴上げが始まりそうで、当の本人は非常に居心地が悪そうだ。
「なんだこれ、居づれぇー……。おい猫、ちょっといいか」
「んにゃん?」
村正はむず痒い空間から逃げ出すように、クラリネを連れて選ばれし子ども達から少し距離を取った。
子ども達の「なんだあいつ」と言いたげな視線も気にならなくなる程度に離れたところで、村正の方から話を切り出す。
「鎧で跳んでみて分かった。こりゃ俺乗せて飛ぶの無理だわ」
「んにゃご!? ……んにゃご!?」
クラリネの言わんとしている事は「最初に言ったのそっちじゃん」だ。
「そんな訳で、今後俺からは俺を乗せて飛ぶよう提案はしません。俺を受け止めようとすんのもやめろ。そのせいで今回一番ダメージ受けてんのお前じゃねえか」
「んにゃ……。ごめんね。わたしも無茶しちゃった」
村正の助けになるかもしれなかったのに断ってしまった作戦。村正を助けるために行った動き。
どちらも村正の助けになるばかりか彼に無用な心配を与えてしまったと、クラリネは落ち込んでしまい俯いた。
俯いた拍子に仮面が地面に落ちて、村正は「うおびっくりした」と後退る。
仮面の下のクラリネの顔は人間に近い造形をしていて、彼女の「哀」の感情をはっきりと表していた。
「でもまー、人間くらいなら乗せて飛べんじゃねーの」
「!」
クラリネは「はっ」と顔を上げた。目はうっすら涙が浮かんでいたのもあり、きらりと輝いている。
逆に村正はクラリネから顔ごと目を反らしており、クラリネから村正の表情を直視する事はできない。
「人間連中は足場遅えし飛べねえし、確実にお前が必要なんじゃねえの?」
「うん……うん!」
「石もビームも数撃ちゃ当たんだろ。俺には飛び道具がねえし」
「うん! うん!」
「あー斧があればなー! 俺も百発百中の投擲斧の使い手なんだけどなー!」
「……しつこい!」
クラリネのネフェルティモン版ネコパンチが炸裂する。
デジメンタルの加護かは分からないがパワーアップしたネコパンチの威力は成長目覚ましく、同じく成熟期の村正の顎にも大変よく効いた。
◇◇◇
家の固定電話からよく知る番号に電話をかける。
電話はすぐに繋がり、剣崎勇夜の声が聞こえてくる。
タツキは手短に要件を告げた。
「という訳で来週の予定なくなったから」
「おん? そうか」
電話の向こうの声は、どこか嬉しそうに空いた予定に何を詰め込むか、こちらに聞いてきた。
今回はたまたま予定が空いたが、今後もデジモン絡みで彼とすれ違う日が続くかもしれない。
……そうだ。決めた。今度会う時にデジモンの話をしてみよう。
「振り回した詫びに面白い話用意しとくからさ、楽しみにしとけよな」
剣崎なら、デジモンの存在を知っても受け止められるに違いない。
新しい友だちと友だち、仲良くなれるといいな。子どものような無邪気な喜びを、久々に感じていた。
一族……一族……大した一族……いや大した奴ら過ぎだろ。夏P(ナッピー)です。
地味いや派手に驚いたのが、3話がもう一年半近く前エエエエエエ!? という事実。
ちゃん羅々とかいう真の主役とばかりに解説しまくり手助けしまくり喋りまくりな女傑。しかも既に頭首なのにしっかり中間試験直前の中高生よろしくまとめノートまで作成して授業を始めるとは大したものです。月姫Rの如くホワイトボード立て始めるのかと戦慄しましたが、恐らくセラフィモンより説明が上手い。それにしたって一族全員ザミエールモンはヤバい、一族の女性だけで木精軍団を結成できてしまう。ところでちゃん羅々は同年代ヅラしておりますが、101やら十〇少年漂流記やら元ネタがとんでもなく年代を感じるので、実はいい歳説。後者なんてドラマやアニメやってたの昭和だろ!! パートナーのダリア以外に他のザミエールモンが次々と名乗りを上げ始めた時は、まさか七人現れて白もとい修羅々雪姫と七人の小人でもやる気かと警戒していましたが三人止まりだった。
そして敢えて作中でもハッキリとザミエールモン=究極体と明言していくスタイル。
結構引っ張るのかと思いきや、早めに明かされた村正の過去もとい前世。剣士じゃなくてボルトモン=斧使いだったとは……サクヤモンが死んだ(?)っぽいのと、そこで記された銃撃の主はつまりそういうことなのでしょうが、本心を吐露できたので打ち解ける仲間としては半歩ぐらい前進したということでしょうか。クラリネ=ネフェルティモンが初めてのアーマー進化で飛行能力を使いこなせない、デジコアに刻まれた手順で必殺技を使うという初進化の能力の使用に関する描写が面白くてニヤリ。
ゴキモン軍団がリーダー初め噛ませにしてはキャラ立ち過ぎてるので、恐らくONE PIECEのバルトロメオぐらいの扱いでいずれゴキブリ×100が彼らの仲間(傘下)として暴れ回ると見た。そしてゴキモンを踏み台にすることで空中戦を挑んだ村正、10数匹は踏み台として連続ジャンプしてるはずなので、最低3機か4機以上は残機が増加しているものと思われます。マンマミーア(テロリリロリ←1UPの音声)。
次回、勇夜君にデジモン明かす流れのようですが、なんとなく不穏な匂いがするぜ……?
それとも一回、バルバモン側の話を挟む感じでしょうか。
ところでちゃん羅々が立ち上げた郵政デジ営化、デジタルワールド側を担当してるのって……!
それでは今回はこの辺りで感想とさせて頂きます。