お前は……私に何の用だ? 仕事について何か質問があるのか。
ボスの話が聞きたい、か。私でいいのか? ヤツとの付き合いは、バンチョーマメモンとブラックウォーグレイモンの方が長いぞ。
──うん? 二人より私の方が話が聞きやすい? そうか? 自分ではそうは思わないが………………頼られたなら、仕方ないな……。
いいだろう。私で良ければ話そう。
トゥエン·ディー·フォー。
ああ。我がテイマーの名前だ。
何? ボスに名前があったのか? それはあるだろう。生物だからな。
まあ、それも仕方ないとは思うが……。ヤツがこのチームのリーダーになってからしばらく経つ。お前のように、名前を全て知らないか、覚えていない者もいるだろうよ。若者は特にな。
………………まあ……いくら妻子持ちとは言え、まだ年寄りという年齢では……いや、何でも無い。
呼び方が多いのが悪い?
それは一理あるが、仕方ない。アレは自分がどう呼ばれようと、構わないという立場だからな。
あの鎧か。別に大したものではない。ただの鎧だ。メーカーのカタログを見てみるといい。あれと同じものが載っているぞ。
銭湯で兜を着けたまま風呂に入っていた、か。
確かに衛生観念だのが不安になるだろうな。安心しろ。と言っても無理だろうが──一応言っておく。トゥエンはちゃんと全身洗うぞ。兜も掃除──そうではないと。特別な理由? そんなものは無いぞ。ただの趣味嗜好の範囲だろう。いや。ヤツは兜を外す時もある。単純にお前が見ていないだけだ。
ボスの素顔は、このテイマーチームの七不思議になっている?
誰だ。そんなものを作ったのは。トゥエンの素顔なんぞ、別に不思議でも何でもないぞ。
……全く。
あの噂は本当か? 噂……どの噂だ。
ウルカヌスモンを投げ飛ばした? エルドラディモンを背中に乗せて泳いだ? ロイヤルナイツのデュナスモンと素手で互角に戦った?
……一つずつ答えよう。
まず第一の噂は本当だ。シュウトの所にいるウルカヌスモンは知っているな? ヤツはトゥエンに投げ飛ばされたことがある。理由か。長くなるから、全てはこの場では話せないが、簡単に言うと、「武器馬鹿のいらん暴走を止めた」と言ったところだ。
……次に、第二の噂。これは嘘だ。……何を驚く。当然だろう。ヤツは人間だ。エルドラディモンを殴ることは出来ても、背に乗せて泳ぐことは出来ない──何だその顔は。私は正しいことを言ったぞ。
最後に第三の噂。これは私にもわからない。…………いちいち妙な顔をするな、お前は。
何故わからないか? 言われた覚えが無いからだな。
私は神ではない。物事の予見は出来るが、箱の中身の生死はわからない。ということだ。例えがわかりづらいだと? それはすまない。
話が脱線したな。
ヤツもいい加減な年だ。仕事のことや共有しておくべき情報はともかく、個人的な事柄は、子供が親に言うように何があった何をしただの、いちいち身内にも言わないだろう。
まあ……あり得そうなことだとは思うが。
ヤツも、休みの日は町の外に出かけることがあるからな。
ロイヤルナイツと一戦交えていても、おかしくはない。
……「互角」には突っ込まないのか? ああ。トゥエンならば、ロイヤルナイツと戦えるだろうからな。そこは疑問に思わない。
ボスの強さの秘訣をおしえてくれ?
さあな。
別に大した秘訣なんぞ無い。生きているうちにああなっただけだ。
嘘? まさか。真実しか言っていない。
私は無責任なことを言うつもりはないからな。
日々無理はせず、己の体と知力を鍛えよ。私が言えるとしたら、それだけだ。
お前はお前として、変化と精進をすれば良い。
トゥエンのようにはなれないかもしれない。だが、お前はお前の強さと道を身に付けられるだろうよ。
信じろとは言わぬ。ただ、年上の戯れ言として扱っても構わない。それは自由だ……あくまでも、お前の人生だからな。
「ヴァロドゥルモン、新人と何を話しているんだ?」
「お前には関係の無いことだ」