何事も無いままガードロモンやジャンクモン達による資源の回収が行われ、いつしか太陽が沈み始めた頃の事だった。
ぶおんぶおん、という機械の排気音染みた音が、遥か遠方より響きだしたのだ。
明らかに自然のそれでは起こりようの無い、それでいて確実に資源回収の現場に向かって近付いてくるそれを、小隊長であるメタルマメモンは敵が接近してくる前兆と受け取ったらしく、故にこそ無線を介して0号を含めた部隊員達に対して速やかな警鐘が鳴らされていた。
『――敵襲だ。排気音から察するにサイボーグ型、もしくはマシーン型のデジモンと推測される。各自、戦闘態勢に移行しろ――』
その警鐘が全員に行き届いた頃には、いっそ獣の鳴らす咆哮のそれを想起させるほどに大きく、そして近くにその排気音が迫り来ていて。
各々別の位置にて待機していた0号の操るメカノリモンやコマンドラモンは既に戦闘態勢を整え終えており、音源に向けてその視線を向けている一方、護衛対象であるデジモン達の内、元々資源の収拾などを主な機能とする種族であるジャンクモン達は車輪を回転させて一目散に逃げ出し、元々の主な役割が資源回収ではなく拠点などの防衛にこそあるガードロモン達はその場から立ち去る事なく、護衛のために出向いている一行と同じく戦闘態勢に移行していた。
事前の情報伝達も相まって形成された、大よそ無駄の無い布陣。
それを真っ向より切り裂かんとするが如き勢いで駆けてくる、彼等の敵の姿が各々の視界に入る。
その姿は、誰かが操縦し地を駆けるために作られた、バイクという乗り物に似ていて。
宿す彩りは赤に銀に黒に灰に取り取りで、二輪の体躯は機械と血肉の両方でもって形作られていた。
全身各部に鋭利な鉄の刃と銃口を宿したその種族の名はマッハモン――『メタルエンパイア』の管理する情報機関に曰く、近頃フォルダ大陸の平原地帯などで目撃されるようになった、サイボーグ型の成熟期デジモン。
その、恐ろしさを覚える速度で襲い掛かる二輪の暴走マシーンの群れに対し、ガードロモン達は両腕部より追尾機能を有した特殊弾頭――『デストラクショングレネード』を発射する。
不法侵入者を決して逃がさず破壊する――ことを求められ設計された武装。
一体一体から放たれたそれは、真正面から二輪を回し迫り来るマッハモン達に直撃し、炎と爆煙を撒き散らす。
だが、撒き散らされた炎と煙を引き裂くようにして、マッハモン達は構わず突撃してくる。
余程頑丈なのか、多少体に焦げ痕こそ見えるが、大してダメージを受けていない様子で。
ガードロモン達が止むを得ず両腕を構えた直後、当然の衝突があった。
ガジャッッッ!! と。
ガードロモンの前面装甲を、マッハモンの前輪に備えられた獣の爪の如き三本の刃が突き立てられる。
弾頭を想わせる恐るべき速度を伴って突き立てられた三本の刃は、分厚く堅牢なガードロモン達の装甲を紙のように破り、その奥にある動力の要に届くか届かないかといった所で止まっていた。
理由は単純。
ガードロモン達が、その両手でマッハモンの前輪の刃を掴み持ち上げ、それ以上の進行を抑えに掛かっていたからだ。
獣の爪によって腹を抉られているに等しいガードロモンの状態は、苦痛に声を上げて然るべきものなのかもしれないが、彼等はあくまでも血肉を有さぬ機械の種族――生き物の有する五感の概念は無いに等しく、体を抉られることで苦痛を覚えることも無ければ、動力源さえ無事であれば死を迎えることも無い存在だ。
故にこそ、彼等は痛みに判断を誤ることは無い。
マッハモンが咆哮を上げながら後輪を回し、前輪脇に備えられた銃口から銃弾を乱射する度にガードロモンの装甲各所が歪むが、ガードロモン達は決してマッハモン達の刃から手を離さない。
そして、直後に。
ドッ!! と太鼓でも打つかのような音が鳴ったかと思えば、マッハモンの頭部を覆う黒い装甲に握り拳大の弾丸が直撃し、瞬く間に穿っていた。
音源は、0号と同じくガードロモン達の護衛に就いている――現在は迷彩色の皮膚が有する機能でもって体色を景色と同化させている――二体のコマンドラモンの手にて携えられた、『メタルエンパイア』の技術によって作成されし狙撃銃――M82ランサー。
その一撃は鋼鉄を撃ち砕き、成長期のデジモンの攻撃と侮る事を許さない。
姿を大々的に曝け出している者が襲撃者の狙いを絞らせ、潜伏中のコマンドラモンが襲撃者の急所を狙撃する――それが有事の際の手筈になっていたのだ。
明らかに生体の部位を有するサイボーグ型のデジモンである以上、急所は基本的に頭部や胴部となる。
過程はどうあれ、動きが止まったのであれば撃ち抜く事は容易いもの。
狙撃手の存在に気付こうが、半ば透明になった姿の彼等を狙って攻撃を仕掛ける事は困難だ。
ガードロモン達がその身を損壊させながらも差し押さえた個体を、それぞれコマンドラモン達が急所に向けての『M82ランサー』の一撃でもって仕留めていく。
一方。
それぞれ姿形も何もかもが異なるデジモン達が各々の役割を果たす中、ガードロモン達と同じく姿を晒している関係から標的とされてしまったらしい0号――の操縦するメカノリモンはと言えば、身を盾として囮役を担っているガードロモン達とは異なり、いっそマッハモン達から逃れるように動き回っていた。
マッハモン達が大地を駆ける速度は尋常ではなく、それは少なくともメカノリモンを操縦する0号が見切れるようなものでは無かった。
反復横跳びにも似た挙動を促す0号の操縦の手は、殆ど反射的に動いていた。
少しでも攻撃を優先しようとすれば、メカノリモンに取り返しのつかない損壊を受けさせてしまうかもしれないと、危機感を覚えてしまったが故に。
「……っ……!!」
しかし、抱いた危機感は僅かな間を経て焦燥へと転じる。
メカノリモンへの損害を避けることを優先しようとすれば、ガードロモン達への損害が増す。
囮役を担ってくれている彼等は、同時に護衛対象でもある。
彼等の損害も減らすためには、必然的に危険な選択を妥協しなければならない。
メカノリモンや自分が壊されてしまうかもしれなくとも、ガードロモンやジャンクモン達の安全を確保するために、襲撃者たるマッハモン達の排除を優先しなければ、それは与えられた役割に背くことに他ならなくなる。
任務上、どちらの損壊を妥協するべきかは明白だった。
迷う暇など、戦場は与えてくれない。
やるべき事をやれ、優先すべき事柄を忘れるな――そう自身に言い聞かせる。
理解の出来ない、体の内側を何かが這い回るような気持ちの悪い感覚に困惑を覚えながら首を振り、その視線をマッハモン達へと向ける。
可能な限り個々の位置を確認してから、最も近い位置で排気音を鳴らし駆け回っている個体へと機体を振り向かせると、ちょうどその個体が真っ直ぐ迫り来るところだった。
操縦桿の上部に備えられたボタンを親指でもって押し、メカノリモンの胴部より奇妙な色彩を宿す光線『トゥインクルビーム』を発射させる。
突然の攻撃に反応出来なかったためか、あるいは自身の防御力を高く見積もっているのか、そもそも攻撃を回避しようという知能を宿してはいないのか、一息に襲い掛からんとしたマッハモンに『トゥインクルビーム』は命中した。
すると、突如としてマッハモンの排気音が止まり、車輪の回る速度も目に見えて遅くなっていく。
メカノリモンの胴部から放たれる『トゥインクルビーム』には命中した対象の体の自由を奪う効果が備わっており、それを真正面から受けてしまったマッハモンは自身の意思でもって体――即ち車輪を含む機構を機能させられなくなってしまったのだ。
あくまでも一時的な話ではあるが、スイッチを切ったに等しい状態になったことは事実。
慣性に従う形で何処か緩やかに直進してくるマッハモンを、その先端にある爪のような鉄の刃を、メカノリモンの三つ指の左手が掴み取る。
ほんの少しだけ後退りつつも大事無く受け止めきると、刃を掴んだ左手を動かし、マッハモンの体を目の前で横倒しの状態にする。
続けて、即座にその右手を削岩機のそれを思わせる勢いで回転させ、マッハモンの頭部へと叩き込む。
その一撃はいっそ突き砕くというより掘り穿つとでも言うべき破壊を齎し、マッハモンの頭部にあたる部位の原型を速やかに失わさせていた。
頭部を損壊させたマッハモンは一切動かなくなり、次の瞬間にその体は粒子となって散らばってしまう。
そして、散らばった粒子はメカノリモンの体に吸い込まれるように集っていき、やがて見えなくなった。
「…………」
それがデジモンの『死』を意味する現象であり、同時に『死』と共に伴う必然的な行為である事を、0号は知識として知っていた。
生命活動を維持出来なくなったデジモンは、その存在を維持出来なくなり数多のデータ塊となって散り果てるらしく。
こういった、結果として生じたデータの粒子を吸収――即ち、ロードする事によってデジモンは個としての力を高めていくらしい。
らしい、と他人行儀であるのは、実際に『死』を目撃することが初めてだったから。
やらなければならない事をやったという事は、理解している。
他に選択肢など無かったということも。
だが、その実感は同時に、自分やメカノリモンが何らかの要因で『死』を迎えてしまった場合、こうなるのだという事実を理解させるものでもあった。
この世界がそういうものであるからなのか、あるいはそういう存在であるからなのか。
何者であれ、死んでしまえば何も残らない。
最初から何も無かったとでも言うようにして世界に、あるいは誰かの一部として溶け込んで、誰にも見つけられなくなる。
身を挺して囮を担っているガードロモン達も、彼等の働きを最大源に活かし狙撃を慣行しているコマンドラモン達も、そして自分が操縦しているメカノリモンも。
そこまで考えてから、考えたくない、と半ば拒絶するように思考を中断した。
どうして思考を拒絶したくなったのか、その衝動の理由も解らぬまま、メカノリモンの操縦を続行する。
鋼鳴る戦いの状況は、概ね優勢と言って良いものになりつつあった。
ガードロモン達の献身も相まって、襲撃者であるマッハモン達は一体一体確実に撃破され、個体数を減らしていたからだ。
マッハモン達の襲撃を一身に受けているガードロモン達の損傷も決して軽いものではないように見えるが、事実としてどの個体も活動が可能な状態は維持しており、彼等は自らに襲い掛かっていたマッハモンの消滅を確認すると、また別のマッハモンに向けて攻撃を放っている。
一機の攻撃だけでは事足りなかった二輪の怪物も、二機以上からなる過剰な攻撃を、装甲に覆われていない部位も含めて受け続けた結果、損害の許容量を超えたのか爆煙と共にデータの塵となって散り消える。
襲撃者一体に対して攻撃に回ることの出来るデジモンの頭数が増えれば、それだけ撃破の確実性も増すのが必然。
0号もまた、メカノリモンを操縦してそんな彼等の援護を行い続けた。
一度傾いた戦局は変わりようもなく、交戦開始から二分も経った頃には既にその場よりマッハモンという種族の姿は消えていた。
周囲の景色から敵の姿が見えなくなったのを見て、囮となっていたガードロモン達の数が一機も減っていないのを確認して、0号は思わず安堵の息を漏らしていた。
(……よかった……)
完璧な形ではないかもしれないけど、やらなければならない事を――任務を果たすことが出来たのだと、そう感じられたから。
自分とメカノリモンがこの場にいたことに意味があったように、束の間だけでも思うことが出来たから。
そして何より――もう大丈夫なのだと自分自身に言い聞かせたかったから。
(……これで、あんしん……)
だから。
いっそ願い請うように、気を抜いてしまっていた。
敵の見えない景色の、その向こう側から聞こえる音の正体を知ろうともせずに。
直後に、結果がやってきた。
ドゴァッ!! という音と共に、視界に広がるジャンクの山が吹き飛ぶという形で。
上方に向かって大小異なる塊を成して散らばるそれは、雪崩にも等しい猛威として『メタルエンパイア』のデジモン達に向かって落ちてくる。
「――ッ!?」
ハッチ越しにも聞こえる凄まじい爆音に、嫌でも意識が覚めさせられた。
半ば反射的にメカノリモンを操縦――体を後方へと振り向かせ、背部のバーニアより火を噴かせることによって、機体がジャンクの山に呑まれぬよう退避していく。
同じ現場に居合わせているガードロモン達やコマンドラモン達のことを気に掛ける余地など無かった。
自分自身――というより、メカノリモンが押し潰されないようにするだけで精一杯だった。
ドドドドド!! と地を慣らしながら落下するジャンクの塊は、規模によっては凶器たりえるモノだったのだから。
吹き飛んだジャンクが全て地面に落ち、音が止んで、そうして数秒経ってから――0号はメカノリモンを再度振り向かせ、ジャンクの山が積み上がっていた景色を改めて見た。
そこには、夕日を背にして立つデジモンの姿があった。
下半身に車輪を、両腕に重機を備えた、緑色の肉体と燃え上がる炎が如き頭髪を有する継ぎ接ぎの怪物。
事前に蓄えられた知識と照らし合わせてみても、一致するシルエットが存在しない未知の種族。
恐らくは、襲撃者であるマッハモン達を率いていたリーダーと思わしき存在。
「――あの、デジモンは……?」
思わず疑問を漏らす0号だが、答えが返ってくることは無かった。
文字の羅列でもって操縦者の支援を行うはずのメカノリモンも、0号と同じく眼前の種族に関する情報を持っていないのか、文字の羅列でもってその詳細を述べることはしなかった。
代わりに、何よりも直視すべし事実を告げた。
『後退を推奨します』
「メカノリモン?」
『あの種族は初めて見ますが、体格から見て恐らくは完全体。先ほどのマッハモンとは比べるまでも無く高い性能を有しているはずです。私の性能では、単機での撃破は不可能。即刻退避し、部隊との合流を』
危機感を訴えかける文字の羅列の表示速度は、先の会話のそれよりも早いものだった。
急いでそう告げなければ、そして判断してもらわなければ、間に合わないとでも言うように。
個々のデジモンの進化段階は見た目で判断出来ないところもあるが、一定以上の体躯を有する個体は最低でも成熟期以上の世代に位置する種族であると大まかに判断出来る――と、自身の作成者たるナノモンも語っていた覚えがあった。
そうした話から考えても、メカノリモンの判断は間違いでは無いのだろうと0号も思う。
だが、ふとして周りの状況を見渡して――無視出来ないものを見つけた。
即刻退避すべきである事を察して尚、放置出来ないものを。
それは、メカノリモンを駆る0号と同じく大量のジャンクの山より逃れ、呑まれずに済んだらしい(鈍重な見た目とは裏腹に移動も素早い)ガードロモン達。
彼等はどうやら、全員共に眼前の継ぎ接ぎの怪物と交戦するつもりらしく、マッハモン達と相対した時から変わらずの戦闘態勢で身構えていた。
というか、今まさに両腕部より『デストラクショングレネード』を放つところだった。
発射された数多の榴弾は、いっそ吸い込まれるように継ぎ接ぎの怪物に向かっていき、そして起爆した。
炎が舞い、爆煙が継ぎ接ぎの怪物の姿を包み隠す。
ガードロモン達の一斉攻撃には、少なくともマッハモン一機を撃破するには過剰さえ呼べるだけの火力が内包されていた。
しかし、風と共に爆煙が過ぎ去って、そうして改めて曝け出された継ぎ接ぎの怪物の体躯には、損傷らしい損傷はおろか、火傷一つさえ見受けられなかった。
事実として、自身の受けた攻撃の威力が危機感を覚えるに及ばぬレベルのものであるのか、継ぎ接ぎの怪物は即座に動き出そうとはせず、標的としているらしい『メタルエンパイア』のデジモン達の位置を確認するように、その視線を右往左往させている。
恐らく確認が終わった時、継ぎ接ぎの怪物は標的と定めた者達に向かって襲い掛かることだろう。
そして、ガードロモン達はそんな継ぎ接ぎの怪物を前に撤退しようとはしないだろうし、何より継ぎ接ぎの怪物がガードロモン達のことを逃がそうとはしないだろうと0号は思った。
故に、0号はメカノリモンに対してこう問いを出した。
「……かれらは? ここでこうたいしたら、みんな……それに、かれらをごえいすることがこんかいのにんむで……」
『お待ちください。確かに任務の上ではそうですが、だからと言ってここで居座っても諸共に全滅させられる可能性の方が高いです。犠牲を少なくする意味でも、ここは後退するべきです』
「でも、やらないといけないこともやらずに、みんなこわされるとわかって、なにもしないでにげるなんて……」
『それは、そうですが――』
0号の言葉に、メカノリモンは回答を詰まらせた。
彼としても、この場でガードロモン達を見捨てる選択をすることが正しいことであると断言は出来ないのだろう。
そもそもの話として、0号が命じられた任務は資源回収部隊であるガードロモンやジャンクモン達の護衛であり、立場からして彼等の生存を最優先としなければならないのだから。
事実から言って、0号の判断もメカノリモンの判断も、その全てが間違っているわけでは無い。
ただ、完全な正解を選び取るには足りないものがあったというだけで。
そうして、彼等は決断を遅らせてしまった。
怪物と戦うか、怪物から逃げるか、そのどちらも選べぬままに。
生死に関わる分岐点とさえ呼べる数秒を、0号とメカノリモンは迷う事にしか使えなかった。
故に、それからの成り行きは必然であったとさえ言えた。
継ぎ接ぎの怪物の泳いでいた視線が、ふと0号の駆るメカノリモンを捉える。
ほんの三秒ほど、まるで品定めでもするように、その目が少しだけ細くなった。
機械に覆われた口元より、悦の混じった声が漏れた。
「――へぇ、なんか珍しいのがいるな」
その言葉に、その視線に。
0号は思わず、ぶるりと背筋を震わせた。
何がそうさせたのかは、解らない。
理解出来たのは、自分が継ぎ接ぎの怪物の言葉と視線に恐れを抱いたことぐらい。
そして、恐怖そのものの理由を知る間などあるわけも無かった。
まず最初に、いっそ爆発とさえ言えるほどの排気音があった。
音を認識したその時には既に継ぎ接ぎの怪物が圧倒的な加速を伴って動き始めており、その下半身にある車輪は大地を焦がすほどの回転を宿していた。
その進路の先にあるのは、先ほど『デストラクショングレネード』を放っていたガードロモン達。
一度0号とメカノリモンに興味を示すような反応を見せていながらも、結局は先んじて襲い掛かっていたマッハモン達と同じように、継ぎ接ぎの怪物の狙いもまたガードロモンなのか。
あるいは、単に自分に対して攻撃を行った者を優先して排除しようとしているのか。
どちらにせよ、無視するわけにはいかなかった。
即座に操縦を行い、メカノリモンの体を継ぎ接ぎの怪物とガードロモンの間へと向け、胴部のリニアレンズより『トゥインクルレーザー』を発射させる。
その性能上、命中さえすれば少しは動きの自由を奪うことが出来たかもしれないその一射は、しかし恐るべき速度で駆けていた継ぎ接ぎの怪物のすぐ後ろを通過するだけで、掠めることすらなかった。
そして、標的とされたガードロモン達の一部は背部のバーニアを稼動させ、それが当然のことであると言わんばかりに継ぎ接ぎの怪物に向かって突撃していった。
「――っ!!」
止められなければどうなるか、予想する事は容易かった。
それが果たされないようにと最善の手を打ったつもりだった。
だが、現実に望む結果が訪れることは無かった。
継ぎ接ぎの怪物が、重機を携えたその巨大な右腕を振り上げる。
メカノリモンに駆る0号の視線の先で、当然と言えば当然の結果が生じる。
「マキシマムデモリッシャー」
継ぎ接ぎの怪物がそう呟き、標的と定めたガードロモンの一体に重機を振り下ろす。
直後に、ガゴギャゴギャガガガガガッッッ!!!!! と。
重機と装甲の擦れ合う耳障り極まった音が辺りに響き渡り、継ぎ接ぎの怪物と相対したガードロモンの機械の体が瞬く間に頭から潰され刻まれていく。
鮮血の代わりに火花と機械油を盛大に撒き散らし、そうして一機のガードロモンは文字通り粉砕された。
その存在を構成していた装甲の破片や内部機構といったモノが宙を舞い、その全てはすぐさまデータの粒子となって継ぎ接ぎの怪物の体に吸い込まれていく。
ロード。
生命を維持出来なくなり、その存在をデータの粒子として還元されたデジモンを糧とする行為。
先の戦闘において、マッハモンの『死』を通じて0号はそれを既に目の当たりにしていた。
それが、デジモンという存在が生きる上で当たり前に有り得るものである事も、理解はしているつもりだった。
だが、同じ現象であるはずなのに、感じるものは何もかもが異なっていた。
任務上護らなければならない存在が、自分の身の危険も顧みずに立ち向かっていった存在が、呆気なく破壊され継ぎ接ぎの怪物の存在を構築する一部と成り果てたその事実に、0号は自分の中の何かに痛みを発する感覚を覚えていた。
襲撃者であるマッハモン達が『死』を迎えた時よりも、それは鋭く苦しみを覚えるものだった。
そして、そうした感傷に浸る事が許される時間などあるわけも無く。
――同じような光景が、二度三度と繰り返されてしまう。
こちらでは新年あけましておめでとうございます、そんなわけで夏P(ナッピー)です。
最初に始まったナノモンの独白から愛など知らぬと言いながらお前誰よりも人間らしいぜと思いましたがそっから出番無くて泣いた。無念!! 前編に引き続いた後編で0号という凶悪な呼び名が与えられたので、てっきり綾波レイや御坂妹ばりに文字通り私が死んでも代わりはいるものと次々と死んで次の第〇号が出てくるのかと戦慄しましたが純愛だった……私の心が穢れていたんだ。
ナノモンもそうでしたが、メカノリモンも話してみれば割と人間臭い奴で、そう考えると最初からこうなることは決まっていたとも言えるか。メタルエンパイアの矛盾と歪みを突くなど印象的な言動を持ちながらも、いやリベリモンお前そこはサクッとやられないんかい!
デジモン化じゃなくて逆に人造人間作成ってすげー発想だ……と打ち震えましたが、最後はとても爽やかなもので。しかしこれ、0号ちゃんはメカノリモンと出会えたからいいけれど、他にも人造(いやデジモン造)人間を生み出し続けたら、恐怖と自己存在理由に揺れた0号ちゃんみたいな感じだけでは終わらず、自意識が暴走して敵に回る奴も出てくるよな……そいつ絶対リベリモンと結託するぜ!(確信)
ではこの辺りで感想とさせて頂きます。