某特濃因習村を浴びてきたので、陰湿なホラーが熱いうちに打ちました。
超絶短編です
◇
とある山の中に、既に枯れ閉じられた井戸があった。
そこに骸骨の化け物が出ると言うので、とあるテイマーらがパートナーデジモンと共に肝試しついで、と向かうことになった。
薄暗い山の中歩き続け、廃村の跡に到着すると、件の井戸がど真ん中に不穏に佇んでいた。
異様な空気に、場が静まり返る。
「ねえ、危ないから帰ろうよ」
誰かのパートナーデジモンが不安そうに呟く。自分のパートナーが危険な目に会うかもしれない不安に、デジモンは目を伏せる。
大丈夫だ、とテイマーと他のデジモン達は井戸に近づき、重たい鉄の蓋をずりずりと開けていく。
「あ」
隙間に多少差し込んだ光の先、白い何かが見えた。
あっという間であった。
大きな骨の手が、井戸を覗き込んだテイマーとデジモン達を鷲掴みにした。
ほんの少し、頭ひとつ分開いた隙間に無理矢理引きずり込まれた人体がどうなるか。
その光景を眺めることしか出来ない、離れた場所にいたデジモンは心底後悔する余裕もない。
ごりゅ。
ぞり。
めきょ。
ぱきん。
ずりゅ。
ぶちゅ。
肉が無理矢理削ぎ落とされ
骨がへし折れ
生暖かく冷えた赤とデータダスクが飛び散る。
「あ、ぁ」
ようやく絞り出せた声もつかの間、真っ赤に汚れた骨の手が残ったデジモンを掴み。
静まり返った廃村に、山の急変が訪れ、激しい雨が降り頻る。
染み込んでいく赤と、流れ壊れていくデータダスク。
「恋しや人間、妬ましやケモノガミ、憎や我が妹背……」
かつかつと骨の鳴る音と、小さな恨み節は井戸に響いて、外に出る前に雨音に消えた。
すっかり冷え切りぬめる体液の温度を髄に感じながら目を閉じ。
また狂骨は夢を見る。
「人恋し狂骨」
(とある井戸の中にいるスカルグレイモン)