ムゲンマウンテンの頂。豪雨、雷鳴、火山から吹き上がる溶岩。常人ならば無事ではいられぬ極限空間。
ここに相対する二組の影。
一つ。天魔の翼を背負いし翻天覆地の大魔王。
一つ。勇気の紋章を胸に抱いて魔王に挑まんとする少年と、彼の勇気を糧に進化した黒銀の騎士
(※ルーチェモンVSアルファモン)
デジタルワールドの未来を左右する世紀の一戦。
そこに接近する一筋の輝きがあった。
(※ブラストモンの外見描写が入る)
デジモンの名はブラストモン。
ブラストモンはジェット機もかくやの高速で飛行しながら、その両手で何かを大事そうに包み込んでいる。
「ふええ、雨雲の下に突っ込んじゃったよぉ」
手の隙間から漏れる間延びした声。
(※ここでヒロインの女の子カワイイ!の描写が入るでヤンス)
この豪雨の中で飛んで移動しようというデジモンはまずいない。だが、ブラストモンは丈夫な体を持っていたために強行突破できてしまった。
だが視界の悪さだけはどうにもならず、本能でなんとなく明るい方へ向かった先が、絶賛噴火中のムゲンマウンテンだったという訳だ。
(※ブラストモンがルーチェモンVSアルファモンしてるとこに突っ込む)
車は急に止まれない。前方不注意のツケは人身、もといモン身事故という形で払わされる。
あろうことか、アルファモンの方を突き飛ばしてしまった。
「は?」
ルーチェモンは目の前で起こった事象を理解できなかった。天地開闢を知るルーチェモンでもこんな状況は目にした事がなかった。
あってたまるものか。
ムゲンマウンテンの上から下まで転げ落ちていくのを呆然と見守っていた。
「ああ! どうしよう! なんか正義のヒーローっぽい人を轢いちゃったよぉ!」
「ぶ、ぶるぁ~!」
一方、少女とブラストモンは、己がしでかした事に気が付いたようで慌てふためいている。
どうにかして場を収めようと必死に考えを巡らすも、混乱している頭ではまともな案は出てこない。
「えーとえーと、いっけえブーちゃん!」
「ぶるぁ!」
パニックになった少女はなんと、ブラストモンにルーチェモンを殴りつけるように指示した。
正義のヒーローの代わりにルーチェモンを倒そうとしたのか、はたまた目撃者を始末して証拠隠滅しようとしたのか、パニックで自分でも何をしているのか分かっていないのか、ルーチェモンには全くもって理解できない。
こんな事を考えている内に、気づけば拳はルーチェモンの目の前に。避け損ねた拳は正面からクリーンヒットした。
「わ、私がサタンモードにさえ覚醒できていれば……!」
ルーチェモンは負け惜しみを言いながら火口に落ちていく。火口を覗いても何も見えなくなった辺りで「どぼん」と音がして、それきりルーチェモンは上がって来なかった。
あのルーチェモンなのでマグマに落ちた程度では死なないだろうが、当分の間は封印状態と言っても差し支えないだろう。
こうして、デジタルワールド全土が注目する戦いは、ルーチェモンの敗北で幕を閉じた。
◇
「ありがとうブラストモン!」
「ありがとう風香ちゃん!」
「太郎もアルファモンも、今までよく頑張った! ありがとう!」
(※凱旋パレード)
(※場面が変わっていかにもライバル属性の少年が悔しがる)
「おかしいだろ!」
「いやおかしいにも程があるだろ! 通りすがりのブラストモンが勇者っておかしいだろ!」
「なんで? ルーチェモン倒したんだから、良いことじゃないのか?」
当の太郎はけろりとして、「何が問題なのか分からない」と言ってのける。
「俺とアルファモンだけじゃ、本当にルーチェモンに勝てるか分からなかったし、」
「あいつらは、正統な勇者ではないだろ!」
「それはそうだろう。彼らは通りすがりで、この結果は偶然の産物なんだから」
「それを言うなら、ルーチェモンと戦ってもいないのに凱旋パレードで讃えられている私たちの方にこそ、正当性は無い」
アルファモンの変に真面目なところは普段は愛嬌だが、今は次郎を苛立たせるだけであった。
わかっている。本当は次郎の怒りにこそ正当性は無い。
当の太郎とアルファモンは、この結果に納得している。民衆だって、二人の今までの功績や努力を認め、讃えてくれている。
ただ、太郎のものになる筈だった功績が赤の他人の物になるだなんて、太郎の戦いをすぐ側で見守ってきた自分には耐えられなかったのだ。
「じ、ジロちゃん」
究極体になっても未だに自分をジロちゃんと呼ぶ(※パートナーデジモンの種族が思いつかなかった)
(※場面が変わって次郎と風香が対面)
「オレは認めない!」
「ま、マンガみたいな事を言われたよぉ……」
「ぶるぁ」
次郎も漫画みたいな台詞になってしまった自覚があった。
別に認めてくれなくてもいいのだが、功績を横取りしておきながらそんな物言いをしたら角が立つ、というのは流石の風香とブラストモンにも分かっていた。
「ゆ、勇者にふさわしい、その、なんだ……心を身に着けろ!」
自分でも何を言っているんだと思った。だが、行き場のないこの怒りを鎮めるために思い付いた条件がこれだった。
(※なんだかんだあって、風香が本来の選ばれチルドレンと一緒に行動することに)
「すごいねぇ。みんな、聖騎士型とかドラモンとかだねえ」
選ばれし子ども達に出会った感想がこれだった。
(※なんかすごく含みがありそうな感じ)
(※また場面が変わってどこかの街角)
「え、お前ルーチェモンだよな?」
「ち、違う! 私は決して明けの明星、輝ける君主、七大魔王最強のルーチェモンではない。ただちょっとルーチェモンにそっくりな髪形と翼を持つ人間の子ども」
「ルーチェモンだよな?」
次郎の目はこんな見え見えの嘘で誤魔化されない。別に次郎でなくとも誤魔化される者はいないだろうが。
「ば、バレてしまったのならしょうがない。そうだ。私こそがルーチェモン様だ」
ルーチェモンはこれ以上誤魔化しても無駄と判断してか、あっさり白状した。
「サタンモードに覚醒するためのリソースを、生存に必要なエネルギーに変換したのだ! おかげでもう百年経たないと
サタンモードになれないぞ、どうしてくれる! なんならマグマからの脱出のせいで消耗したから、フォールダウンモードに
なれるかもちょっと怪しい」
なるほど。予想よりも遥かに早く出てこれたのはそういう訳だったのか。
ここで次郎に魔が差した。本当に魔が差したのだ。
復活したルーチェモンを太郎が倒したら、今度こそ太郎は真の英雄として讃えられるのではないか?
(※なんかあってルーチェモンVS太朗&風香になるらしい)
「私ね、本当は選ばれし子どもとかナイツとか、そういうの大嫌いだったの」
「でもあなたは、私のブーちゃんがブラストモンだからだめだ、とは言わなかった。行動で判断してくれたね」
「それに、話してみて分かった。選ばれし子どももパートナーデジモンも、たまたま“選ばれちゃった”だけで普通の人たちなんだ」
「選ぶ方が恣意的で、好みで選んでいただけなんだ」
(※何があったのかははっきりとは書かれないが、風香がめちゃくちゃ選ばれしなんとやら概念を嫌っているのがわかる)
(※戦闘決着付近のルーチェモンのセリフ)
「私はエンシェントグレイモンとエンシェントガルルモンと、エンシェントビートモンと、それから――」
「古代十闘士って言えよ」
「後、スサノオモンが大嫌いだったんだ。だが、あの日からラインナップにブラストモンが加わった!」
「死ぬがいい! 砕け散るがいい! 残った破片は我が玉座の飾りにでも使ってやろう!」
(※なんかあってバトルの決着がつく。ブラストモンは砕け散ってしまう)
「死んでしまったのか? ブラストモン」
「ううん。生きてるよぉ」
風香はしゃがみこんで、足元の破片をつんつんとつついた。すると……
「ぶるあっ、ぶるぁっ」
破片が、鳴いた。
(※後はなんか良い感じの〆なんだけどそもそもどんな〆なのか全く思いつかなかった)
【嘘言】
大変面白く読ませて頂きました! 夏P(ナッピー)です。
デジモン的物書きの常として、やはり自分の最も好きなデジモン(平民)こそが最高で最強であって欲しいと願うもの。そうした意味でブラストモンが英雄なのはグッドでしたが風香ちゃんは変わらず風香ちゃんのままで英雄というかただ強かったというのもまた心地良い。それはそうと太郎君に対して次郎君はパートナーベーダモンなんだと思っていましたが、太郎がαだから次郎はβだったんですね。てっきりクールボーイモチーフでオメガモン辺りが来るものかとばかり。
ダイヤモンドジョズもびっくりのブラストモンの体当たりは最後まで有効でしたねー、いや奴の体当たりも青キジぶっ飛ばす程度には強かったわけですが、肉体四散しても顔の部分だけで生きられるならこのまま鍛え続けたらゴローニャよろしくだいばくはつを体得できるかもしれない。
そして本作のルーチェモンの声は絶対海馬社長。砕け散るがいい!
このままルーチェモン様、色んなデジモンに負け続けてその度に苦手なデジモン増やすんかなぁ。
それでは今回はこの辺りで【嘘言】とさせて頂きます。
……
…………
………………
ヤンスって何だよ!!
【嘘言】
大変面白く読ませていただきました。
私、太郎君とアルファモンのこと好きかもしれない……
普通に考えて次郎君&太郎君VSルーチェモンになるところをよもやあんな展開で次郎君も本当は決して悪い奴じゃないんだよと示しながら退場&バトンタッチさせるとは驚きました。何を食べていたらあんなあざやかな展開を思いつくんですか……?まさかあんなコミカルでロジカルでシニカルな展開のさせ方があるとは、本当に脱帽です。
〆の、ブラストモンの破片を次郎君も守られたデジモン達もツンデレしながら一緒に拾い集めてくれるところとか、太郎君達とのそれがあってみんなに受け入れてもらえたんだなぁよかったなぁとほっこりしました。
この度は企画に参加していただきありがとうございました!
――――――
(※ここからあとがきでヤンス。嘘偽りのないあとがきでヤンス)
ヤ~ンスッスッス!(笑い声)
筆者の羽化石でヤンス! 最強読者のみんな、読んでくれてありがとうでヤンス~!
この作品は「ブラストモンが暴れ散らかす話を書きてぇ」という気持ちで書こうとしていた作品でヤンス。全然暴れ散らかすところ書けてないでヤンスね。
ツイッターを見てくれている人はご存じだとは思うでヤンスが、オイラは「公式に……ブラストモンは最強だという話を叩きつけるよぉ……」と息巻いていたでヤンス。でもぜ~んぜん思いつかなくて、一か月くらいムダにしてしまったでヤンス。
そんな時、夜寝る前に布団に入った瞬間ピキーン! と思いついたのが、「選ばれし子どもVS魔王の戦いに乱入して勝っちゃうブラストモン」の話でヤンス!
なんだかいけそうな気がしたから、ツイッターで「とりあえずこれで書いてみます」と宣言したでヤンス。
ぜ~んぜん書けなかったので今これがここにあるでヤンス。
ほんとにこれしか思いつかなかったでヤンス。嘘あとがきのネタすら無いでヤンス。
最終的に、既存の作品に大幅加筆修正して投稿したでヤンス! こちらもブラストモンの話だから結果オーライでヤンス。
『砕壊ゴグマゴグ』という話でヤンスね。(ノベコン結果発表までは非公開にさせてもらってるでヤンス。ごめんね)
締め切り一週間前の土壇場でブラストモン関係無い真のナイスアイディアを思いつき、ギリギリ限界執筆もしたでヤンスが、その、察してくれでヤンス。(ツイッターで7/8→7/9のツイートを検索すれば答えがそこにあるでヤンス)
ここからはついでに『砕壊ゴグマゴグ』の話もさせてもらうでヤンスが、こちらはさっきも言った通り元作品に加筆どころか「新たなるラストシーン」を付け足した、言わば完全版と呼べる作品でヤンス!
実は最初から『砕壊ゴグマゴグ』のラストで書かれた旅の到達点を描いた作品の構想があったんでヤンス。ただ、他の作品を書くのを優先してて中々書けていなかったでヤンス……。
それを今回書かせてもらった訳でヤンス!
『砕壊ゴグマゴグ』をまだ読んだ事がない人はもちろんでヤンスが、既に『砕壊ゴグマゴグ』を読んだ事がある人にこそ!読んでもらいたいでヤンス!
できれば公式の結果発表ページでお会いしたいでヤンスねぇ~。でも、オイラの知ってるデジモン小説書きの皆さんは全員入賞必至の猛者だから(幸せなことでヤンスね)、どうなるか分からないでヤンス。
(そもそもなんでヤンス口調なのかと言うと、「フォロワーが入賞した時のために腰巾着になる練習をする」とか言ってたらいつの間にかノベコンの話題はヤンス口調でする謎生物に進化してしまったでヤンス)
一体誰が入賞するのか、結果発表が待ち遠しいでヤンス~!
あとがきの方が内容詰まってるでヤンスね。
追記:太郎と次郎が太郎と次郎なのは、名前が思いつかなかったからでヤンス。後からちゃんと考えようと思ってたけど本当にいくら考えても思いつかなかったんでヤンス。