むかしむかし
全人類の怨念をその身で抱え生きながら苦しむ暗黒デジモンがいました。
あまりの長い時を生き続け怨念を生物の負の感情を溜め込んだので、自我が崩壊するのを防ぐために彼は自身の身体から分身をピエモン、ピノッキモン、メタルシードラモン、ムゲンドラモンを生み出しました。
4体のデジモンは暗黒デジモンから切り離された闇そのものです。
別世界では彼らのことをダークマスターズと呼びます。
選ばれし子供たちを苦しめ多くのデジモンの命を奪った恐ろしい究極体デジモンです。この世を闇に貶めるために生まれた凶悪なデジモンであるはずでした。
ここは愛情の紋章の影響を受けている
この世界の暗黒デジモンは変わっていて、この世全ての命を愛していました。だから世界を地獄に変えることを望んでいなかったのです。本来ならば闇から生まれたデジモンは他者を憎み、傷つけ、不幸に陥れることしか考えないのにこの世界の闇のデジモンは一部を除けば根は優しく素直に謝れる反省できる良い子たちばかりです。
自分が助かりたいという想いで生み出されたダークマスターズは自身の心とその在り方の矛盾に精神が崩壊し、4体全員自殺してしまいました
暗黒デジモンは悲しみました
そして痛哭しました
自分が抱えている負の感情は他者に押し付けてはいけないのだと
この無念の苦しみ、悲しみ、怒りは自分1人で抱え込まないといけないのだ
それと共に寂しさが更に込み上げてきました
自分と似た存在がいれば少しは孤独な不安だけでも軽くなると期待していたのだ。
「本当にそれが動機で彼らを生み出したのか?」
そうです。本当はこんな自分を愛してくれる存在が欲しかったのです。けれどそれは叶いません。この世から全ての命がいなくなるまで暗黒デジモンは、アポカリモンは消えることはありません。生き続けなければなりません。
「死んだ怨念が詰まったこの肉体、この醜い姿を一体誰が愛してくれるというんだ」
命は生まれては死ぬのに、デジモンは死ねばデータさえ残れば転生し新たに生まれ変われる。このデジタルワールドの仕組みによって生まれたのが私/俺/僕/我々だ。
しかし望みは捨てない
我々は諦めない
生まれてきてよかったと心から思える時まで何としてでも生き抜き、必ず光の世界の住民となるのだ。
そして、そして…
「たくさん、愛されたい…」
ダークマスターズだったデジモンのデータの破片を掻き抱きながら彼はこの瞬間を死に行く魂たちの受け皿となり寂しさと悲しみ、苦痛を耐え続ける
けれど彼は1人ではない
明るく眩しい地上で暮らす親子を、仲睦まじい夫婦を、家庭を見つめる
叶うならば来世への夢を胸に踊らせる
幸せを夢見る
そうだ
これだけ我慢してるのだからきっとご褒美は幸福に違いない
たとえ叶わずとも
夢を見ることは自由なんだ
「うっ」
全身に針が刺さったような痛みが襲う
恐らくまた誰かの無念が流れ込んできたのだろう
けれど、けれど
アポカリモンに愛がある限り
この責務を投げ出そうとはしないだろう
【完】