
花火大会当日、猗鈴と便五はまだ日も落ちない内に家の屋台を後にしていた。
「ちょうどよかったよ。森田のカード大会、大人の部は日が落ちてからだけど、子供の部はまだ暗くならないうちだし」
「……でも、参加できないんじゃ?」
「千歳のこと応援してあげたいからね」
なるほど、と猗鈴は頷いた。千歳というのは昨日会った少年のこと。猗鈴が彼からもらったお古のデッキケースにはでかでかと『大蔵 千歳』と書かれていた。
「それにしても、大人の部って人集まるの?」
「×モンも出てから八年ぐらい経ってるからね……僕より少し上とか、高校生とかだと何人かいるんだよ」
猗鈴はそうなんだと呟いた。八年前のをただ同然で売ってアレだけパックが余ってるってどうしてそんなに仕入れたんだろうと、少し思った。
「……米山くん、靴紐解けてるよ」
猗鈴は、便五の靴紐をわざと踏んでほどけさせると、優しくそう言った。
そして、便五が道の端によって紐を結び直しはじめると、スッと便五から見えない様に立ち去った。
「あれ? 美園さん?」
靴紐を結び直した便五が立ち上がって周りを見渡すと、猗鈴の姿はすでに見える範囲にはなかった。
「人混みに流されたのかな?」
まだ日も落ちてないとはいえ、既に屋台は幾らかの賑わいを見せている。
今の内に屋台で食べ物を買って花火を待つという人もいるだろうと便五は思った。
「あ、便五じゃん。ひさしぶりー」
「べんちゃんおひさー」
便五が振り返ると、浴衣を着た便五と同じくらいの女性が数人いた。
生まれがここの便五は仲のいい幼馴染も別に少なくはなかった。
そして、猗鈴もそういうことは簡単に想像ができた。彼女達は猗鈴の中学校の時のクラスメイトだった。
「久しぶり、でも、人を待たせてるから」
「あ、そう?」
「後で屋台行くねー、なんかおまけしてー」
便五がさらりとそう言うと、彼女達もさらりとそう返して、人混みに消えていった。
別れて少し急ぎ足で便五が歩いていると、ふと、視界の端に泣きじゃくる小学校高学年ぐらいの子供がうつった。
それを見て、便五は一瞬迷ったのち、人混みをかき分けてその子の方へと向かった。
「どうしたの?」
「……ママにもらったお小遣いを落としちゃったの」
ふと脇を見ると、その男の子はもう何歳か年下の子供の手を握っていた。
「いくら落としたの?」
「千円、二人で使いなさいって」
でも風で飛んでっちゃったとその子は言った。
「……それならね、さっき僕拾ったよ」
そう言うと、便五は自分の財布から千円札を一枚取り出した。
「ほんと?」
「ほんとだよ、もう飛ばされないように、しっかり持っておくんだよ」
「うん、ありがとう」
大きい方の子が頭をぺこりと下げると、小さい方の子も一拍遅れてぺこりと頭を下げた。
そして、そのまま人混みに去っていくのを便五は少し心配そうに見送った。
「さて、猗鈴さんを追わなきゃ」
そう言ってふと立ち上がって少し進むと、便五の前に黒ポニーテールに一部赤いメッシュを入れたメガネで浴衣の女、鳥羽が現れた。
「どうもどうも、米谷便五さんですよね。私、鳥羽というものです」
鳥羽はそう言って警察手帳を見せた。
「え、警察の人?」
「はい、そうです。この前探偵事務所で小林に会いましたよね。その相棒でーす」
いぇいと鳥羽は目元で横にピースを作った。
「はぁ、で……何かあったんですか?」
「いえいえ、公竜さんがお世話になったのでご挨拶までにと。あ、でもですね! 例年屋台付近でスリや痴漢が起きてますから、何か見かけたら花火大会の運営本部につめてる公竜さんか、制服巡回してる警察官、もちろん私でもいいのでご一報をって感じです」
そばに見えなかったらとりあえず私の名前を叫ぶでもいいです。近くにいれば行きます。と鳥羽は言った。
「あ、はい。その時は……」
便五が頷くと、鳥羽はそれではーと人混みに消えていった。
今度こそと便五が歩き出すと、ほどなく目の前でふらりと顔色の悪くなった女性がよろめいた。
「大丈夫ですか?」
便五と同じく即座にもう一人男性が女性に声をかけた。
「なんだか……急に、気分が」
そう言う女性に、男性もついているからと一度立ち去りかけて、便五はふと、女性を支えようとする男性の手が不自然な上ににやついていることに気がついた。
「……ッ、鳥羽さん!」
振り返って便五がそうちょっと大きな声を出す。しかし、もう鳥羽の姿は見えない。
遠くへ行ってしまったのかと女性の方に向き直ると、鳥羽は片手で女性を支え、片手で男を捻り上げていた。
「がっ、俺はその人を介抱しようとしてただけで……」
「言い分は後でちゃんと調書取りながら聞きます」
「ち、くしょう……」
『コドクグモン』
「メモリの現行犯も成立。すみません、代わりにスマホとこの人支えててください」
『こちら小林』
「こちら鳥羽、痴漢事案発生。被害者は意識があるが顔面蒼白、犯人のメモリ名『コドクグモン』から、毒を盛られた可能性あり。犯人を取り押さえたものの、脚が多く満足な拘束ができていない。被害者の介抱も居合わせた一般人に応援と救急を要請する」
子供程のサイズの大蜘蛛に変化した犯人の八本の足を手錠と浴衣の帯を使って拘束しながら、鳥羽は便五の掲げたスマホに向けて話しかけ、もうちょっとだけお願いしますと頭を下げた。
「……姫芝。こんなところで何してるの」
同級生の女子を見つけて便五から離れた猗鈴がおもちゃの森田の屋台へ着くと、そこには姫芝と車椅子に乗って、小さなザッソーモンをぬいぐるみのように抱えた永花がいた。
「戦うつもりはありませんよ」
懐のベルトに手をかける猗鈴に、姫芝は懐からザッソーモンのメモリを取り出すと、それをぽいと猗鈴になげた。
「少し、彼女と話してきます。待っていてくださいね」
屋台の裏手側に回った姫芝に、猗鈴は毒気を抜かれて大人しくついていく。
「……事情を聞かせて」
「永花さんは、組織の顧客です」
猗鈴は即座にメモリを持ってない方の手で杉菜の首を掴んで、木にその身体を叩きつけた。
「ここからの発言は慎重に、言葉を選んで話して」
「……永花さんはメモリを使わないと死んでしまう」
「なぜ」
「わからないんです。症状としては毒物を服用させられているような状況に近いものの、入院しても治らない。検査しても毒が出てこない。腎機能や肝機能にも問題がない」
「それで、何故メモリを?」
「今の彼女はまともな食事を取ることさえ身体に負担がかかる状態です。でも、メモリを使えば一時的にデジモンの身体になる。その状態でならば、症状は進まない。加えて、彼女のメモリ、シェイドモン は寄生するデジモン。消化吸収の負担を他者に任せて元の身体への負担を少なく大量のエネルギーを吸収できるし、メモリの解除時に肉体も最適化される」
「……つまり、姫芝はあの膝の上のザッソーモンは点滴みたいなもの?」
そう言って、猗鈴は手の中のザッソーモンメモリを見た。話が本当ならば、姫芝は既にザッソーモンメモリを使っている。だとすればこれは予備に過ぎないし、ザッソーモンメモリは最も安価なメモリの一つでもある。
「そういうことです。シェイドモンは宿主の心も栄養にできる。私が代わりに食べることで、彼女は食事の楽しみを追体験もできる」
「……治す方法はそれしかないの?」
「それはむしろ私が聞きたいことです。例えば、ウッドモンの能力で見つけられない毒物を吸い出すことはできませんか? いや、できなくても例えばその能力を通じてシェイドモンメモリを使わせずに栄養点滴より多くのエネルギーを補給できるだけでもかなりマシです」
「……姫芝、あなたは」
「私は、永花さんの未来を守りたい。何かに歪められる人生なんて……」
「杉菜お姉ちゃん、何してるの?」
その声に、猗鈴は静かにみえにくいように手を引いた。
「何もしてませんよ」
姫芝は、永花に対して、そう微笑み返した。
「あれ、美園の姉ちゃん知り合いなの?」
「千歳くんこそ、知り合いなの?」
「あ、うん……まぁ、ちょっとね。一年ぐらい前に、結婚するって約束した」
そう言って、千歳は顔を赤くした。
「……なかなか千歳くんもすみにおけないね」
顔を赤くしてえへへと笑う千歳に、杉菜が永花を見ると、永花は喜びながらもなんとも言えない切なげな顔をしていた。
「……姫芝。さっきの話、とりあえずうちの上司に相談はしてみます。病院の名前教えてください」
「わかりました」
そう言って、姫芝はメモに電話番号とメールアドレスを書き込んで猗鈴に渡した。
「あなたのアドレスは知ってるので、こっちの知る詳細は送ります」
「じゃあ、千歳くん。私大会のエントリーの仕方知らないんだけど、教えてくれる?」
「まだしてなかったの! もう締切間近だよ!」
猗鈴と千歳が屋台の表へと回ると、姫芝は永花の後ろに回って車椅子を押す。
「……ねぇ、杉菜お姉ちゃん。顔見たら私、言えなかったよ」
杉菜を見上げる顔は影のように黒く、ところどころに傷の様に幾つも開いた裂け目からは赤い眼がのぞいていた。
杉菜が分身を出しながら人の姿を維持しているのと同じ様に、永花もまた、シェイドモンのメモリを使用した上でここにいた。
「……なら、覚悟するしかないですね。ちゃんと治す覚悟を」
「そんなのうまくいかないよ」
「うまくいかせます」
「絶対無理だよ、杉菜お姉ちゃんが優勝するぐらい無理」
「なら、私は優勝します」
杉菜の言葉に、永花はそんなのと言いかけて、杉菜が本気で言っているのを感じて押し黙った。
「本当に……? 本当に優勝できる?」
「約束します。だから、私が優勝したら永花さんも諦めないでください」
子供の部が終わり、大人の部が始まった時、二人だけ空気が違う人間がいた。
一人は杉菜、そしてもう一人は杉菜の表情から何かを感じ取った猗鈴である。
「やけに気合入ってるけど、美園さんどうしたの?」
受付に間に合わなかった便五がそう千歳に尋ねると、千歳もわからないと首を横に振った。
「この戦いになにかを賭けている人がいる。私は、それに応えなきゃいけない」
な、わからねーだろという千歳に、便五もうんと頷いた後、でも真剣な猗鈴の顔を見てちょっといいなと頬を染めた。
小規模大会故、決勝まではあっという間だった。
トーナメントを勝ち上がった一人は当然姫芝、もう一人も当然猗鈴だった。
「……すげぇな姉ちゃん。始めたばっかでいきなり決勝だぜ」
「うん、スギナさんの方も見たことない人だけど、かなり技巧派な立ち回りをしている。でも、美園さんは立ち回りはそこそこだけど、ドロー運が天才的。『卵』デッキはどうしたってカードが腐りやすいデッキなのに……」
「……なにをかけているのか知らないけれど、負けるつもりはないから」
「それでいいです。譲ってもらった勝ちじゃ意味がない」
互いのデッキをシャッフルし、プレイマットの上に乗せると、お互いのデッキがぽわっと光り、テーブルの上を小さな光の粒が走った。
「……今のは、何」
「決勝用の演出?」
「マイスター、手が込んだ仕掛け作ったな……」
「マジでマイスターいつ仕事してるんだよ……」
猗鈴は周りの声を聞いてそういう仕込みかと納得したが、姫芝はそうじゃないと気づいていた。
自分の鼓動と別にデッキから感じるそれは、デッキの海に沈むなにかの息遣い。自分を引けと囁いている姫芝の切り札。
「……姫芝、ぼーっとしないで」
猗鈴に言われて姫芝は最初の手札を引いた。
「兄ちゃん、この勝負、どっちが勝つだろう」
「デッキ相性は互角かな。『卵』デッキは『卵白騎士団』の強力効果が出せるまでがネック。でも、『雑草今生』デッキも速攻には向かないし、お互いに明確な弱点は少なく、わりと汎用性あるデッキだから弱点を突くのは難しい……」
「いや、でも『卵白騎士団』デッキの主力除去手段は効果破壊だもん。フィールドから墓地へが条件とちょっと重いけど効果は強力な『雑草今生』の杉菜お姉ちゃんが相性有利のはず!」
「確かに、美園さんが『卵白騎士団』だけで戦うつもりならね」
便五の言葉に、永花はえっと呟いた。
「私はコストとして山札の上から一枚除外して『終末埋立地ヴァルハラ×××』を発動。このカードが場にある間、お互いの墓地に送られるモンスターはこのカードの下に重ねられ、その枚数に応じて効果が発動する」
猗鈴はそう言ってカードを一枚手元に置いた。
「そんな、墓地封じカードだなんて……これじゃ杉菜お姉ちゃんのデッキはただの紙クズになっちゃう!」
ターンエンドと猗鈴がターンを渡すと、姫芝は真剣な顔で一枚ドローし、『終末埋立地ヴァルハラ』を墓地に送ってそのカードを場に出した。
「相手の場に出された呪文カードをリリースして、『行きずり大根』を特殊召喚」
「やっぱり、姫芝さんも対策はしている。デッキ的にはこれで大体互角ってとこかな……実力的には姫芝さんが上、だけど美園さんの引きの強さはイカサマレベル……この勝負、目が離せない!」
便五が興奮気味にそう言うと、不意に二人を囲む子供達の輪をかき分けて、一人の女が進み出てきた。
「……なにか、用ですか?」
青山がそう聞くと、女は不意に懐からメモリを取り出すとそのボタンを押した。
『コドクグモン』
それを見て、猗鈴は女の手首を掴み、捻り上げながらその身体を地面に叩きつけると女の手からメモリを取り上げた。
「米山くん、警察に通報。デジメモリ犯罪対策室ってとこに……」
「わ、わかった。鳥羽さんとかいう人のいるとこだよね?」
「そうですそうです。呼ばれて飛び出て私、デジメモリ犯罪対策室の鳥羽です」
いつの間にと猗鈴が言うと、決勝戦始まった頃からと鳥羽は答えた。
「米山さんがさっき捕まえた痴漢の話は聞いてますか?」
「……痴漢捕まえてて遅れたの? 女子と話してたんじゃなくて?」
「え、あの子達とはすぐ別れたよ?」
「話戻しますね。彼から押収したメモリがなんかおかしかったんで、美園さんから斎藤博士に相談してもらえないかなぁと思ってたんですよ」
鳥羽はそう言って猗鈴の手からコドクグモンのメモリを奪うと、えいと指で押し潰した。
「……灰になった?」
「えぇ、そして……さらに光に溶けていく。まぁ、人間の世界由来の物質ではあり得ないってわけです」
くわえて、と鳥羽はスマホの画面を猗鈴にだって見せた。そこには公竜が映っていた。
『こちらでの取り調べによると、痴漢男は、今日、何者かにそのメモリを挿されて初めてメモリを使ったそうです。おそらくそこの女性もそう、何者かがデジモンの能力でメモリを複製して通り魔的に挿している可能性がある』
しかも、と公竜はさらに続ける。
『今日使用したにしては精神汚染がひどいので、犯人の複製は精神汚染が副作用としてではなく、機能として強化固定されている可能性もあります』
「つまり、挿された人間は何かしらの犯罪に出るメモリを挿す通り魔がいるという状況?」
『断言はできませんが、そこでも起こった以上そう見ていいでしょう』
警察官のパトロール人員を増やせないか今手を尽くしてますと公竜は言った。
「……私としては×モンの試合見たかったですけどね」
相手も逃げちゃいましたしと鳥羽は残念そうに言った。それを聞いて猗鈴が姫芝のいた筈のテーブルの対面を見ると、もう杉菜の姿はなく、永花の姿もなかった。
「ねぇ、杉菜お姉ちゃん、なんで? なんで逃げたの?」
「警察が売人の私を見つけたらきっと犯人と疑うでしょう。事件が解決するまで一旦身を……」
並ぶ屋台を見下ろせる近くのビルの屋上へと移動し、杉菜は
そこから祭りを見下ろした。そして、それを見た。
まず、人の群れの中に一体の蜘蛛が現れた。そして悲鳴が上がり、騒ぎになったと思ったら、また別のところで誰かが蜘蛛になって屋台を襲い出した。悲鳴が騒ぎが大きくなるとそれに呼応するかのように潜伏していた誰かが蜘蛛になっていく。
さながらパニックホラーの如き情景で、このままでは花火大会なんて行われるわけがないのは目に見えていた。
でも、杉菜が分身して止めに行けば、警察や猗鈴が行くまで被害を抑えれば、もしかすると永花は花火が見られるかもしれない。千歳の横で、見られるかもしれない。
「……杉菜お姉ちゃん、最近街にヒーローが出るって噂知ってる?」
「ヒーロー……」
「仮面をつけたヒーロー」
「……私は、知りません」
杉菜は嘘を吐いた。でもそれは、寄生している永花には筒抜けだった。
「……あの美園さんって人がそうなんだ。お姉ちゃんは、杉菜お姉ちゃんは勝負から逃げて、私に嘘を吐くの? あの人に、お姉ちゃんこのままだと負けちゃうよ?」
杉菜は、永花から目を逸らしたくなった。潜伏するならば、永花の安全を考えるならば今が最善なのに、それが今はひどく後ろめたい。気分が悪い。
もっとできる筈だと限界から先へと自分を鼓舞することは杉菜にはよくあったが、その限界の手前で燻るのは久しくない経験だった。
「行って、杉菜お姉ちゃん。大事な時には負けないんでしょ」
永花の頬を涙が流れ、杉菜は思わずそれを手のひらで受けた。
「……わかり、ました」
杉菜の手のひらが光り、ぼこぼこと泡立ち、分身のザッソーモンが現れる。そしてそのザッソーモンは、ビルの屋上についた蛇口を捻り、そこから溢れた水を杉菜へとぶっかけた。
「約束、しましたもんね」
うんと永花は頷く前で、杉菜の姿は人のものからザッソーモンのものへと変わり、その身体中がぼこぼこと泡立って分身を生み出していく。
「では、永花さんはここに。私は犯人を捕まえてきます」
分身のザッソーモンを二体残して杉菜はそう言って屋上の端に足をかけた。
「犯人の場所がわかるの?」
「大体なら……今も、蜘蛛が増えているところを探せばいいんですよ」
杉菜はそう言って、ザッソーモンの姿になると蔦になった腕を電柱に巻き付けてビルの屋上から、今もコドクグモンが増え続けている地点を目指して飛び降りた。
それに続いて、姫芝の分身のザッソーモン達が続々と屋上から飛び降りていく。
人混みを掻き分け、屋台の上を飛び跳ね、コドクグモンの元へと辿り着いた分身達は蔦を巻き付け頭に齧りつき、コドクグモンの動きを止める。
コドクグモンに噛みつかれても、その毒はザッソーモンという種の体力から見れば大したダメージにならない。
締め上げる力は弛まず、コドクグモンは逃げることもできない。
「……そういうことね」
『ウッドモン』『ブランチドレイン』
猗鈴は伸ばした棍で人混みの隙間を縫って伸ばした棍でコドクグモンを地面に縫い付け、そう呟いた。
「米山くんは子供達がパニックで逃げ出さない様に」
そう言いつつ、猗鈴は人混みから飛び出してきたコドクグモンに対し、カウンターの拳を顔に叩き込む。
「ザッソーモンって大西さんの報告書だと敵だった様な……まぁ、公竜さんは人混みだと格闘しかできないし、ありがたいんですけどね」
浴衣の袖と腕を蝙蝠の羽の様にした鳥羽は、空からそう呟くと、ザッソーモンが捉えられてないコドクグモンのところへと飛ぶと、その袖に付いた突起をコドクグモンに突き刺し、数秒経つと口をモゴモゴさせ、口から何かを吐き出した。
鳥羽の吐き捨てた液体は壊れたメモリに変わると、そのまま灰になり、光に溶ける。
「公竜さん。緊急事態だし、『吸血』してますけどいいですよね?」
『好きにやれ、鳥羽。この規模と状況、僕は前線に出る余裕がない。警察官達の指揮に専念する』
「やっぱ公竜さんその方がいいですよ。わけわからないベルトより、私のマントの方が公竜さんの顔見えますし」
鳥羽の言葉に、公竜は答えずに通信を切った。
14話に続いて15話で追い付いた夏P(ナッピー)です。
ソリッドビジョン!? 海場コーポレーションが完成させていたのか!? 前回も大概でしたが、それにも増してガチにも程があるレベルでカードゲーム回だった。シュタインズ・ゲートのフェイリス編を思い出すレベルでヤバいぜ! というか、噛ませとか尻彦さんとか言ってきましたが姫芝サン熱いヒーロー過ぎる。伊達さんいるけどやっぱり君が2号ライダーだ! 既にヒーローであるものとヒーローになろうとするものの対比! 仮面ライダーアギトだ! そして鳥羽さん何だかんだ言ってお役立ちキャラじゃねーか!
そして相変わらず便五クン悲惨。いやでも気付いたら巻き込まれてシレッとしてるのはある意味で我が友カ・ガーミン的な有能なのか……? 永花サンは今回のラストできっと──と思ったら、あとがきで真実とか凶悪なワードが待っているので不安、というか不穏。
それでは次回もお待ちしております。