[その一はこちら https://www.digimonsalon.com/top/totupupezi/dezimonhatupiwaku-teriamonnoohua ]
ボクはテリアモンでぃす。
この喋り方は癖なのでぃす。
ボクはデジタルワールドから来たのでぃす。
そして色々あって、デジモンの派遣会社「ハッピーワーク」で働くことになったのでぃす。
今日はそんなボクの後輩を紹介するのでぃす。
介護ホームからハッピーワークの事務員に異動したボクは、毎日書類とにらめっこをしているのでぃす。
ボクの仕事は、登録されているデジモンのデータの整理に、新しいデジモンのデータ入力、デジモンに会社の事を説明するお手伝い…他にも色々あるのでぃす。
パソコンの使い方を勉強して、書類作りやメールの返信も出来るようになったのでぃす。
ぶらいんどたっちもできるのでぃす!
ある日、上司の園田さんがボクに言ったのでぃす。
「テリアくん、来週から新人さんが来るから、指導係になってもらいます。色々教えてあげてくださいね」
ボクが指導係!
ボクはびっくりしたのでぃす。
ボクは他の社員さんと比べて半人前だったからでぃす。
園田さんも他の人達もみんなベテランなのでぃす。
だからボクより他の人が教える方が良いと思ったのでぃす。
「ボクでいいのでぃすか?」
そう聞いたら、
「テリアくんなら任せられると思ったから選びました。頼みますね」
園田さんはそう言ってくれたのでぃす。
園田さんに頼まれるなんて、ボクは嬉しかったのでぃす。
だからボクは頑張って指導係をすると決めたのでぃす!
「わかったのでぃす。それで新人さんはどんな人でぃす?」
ボクがそう訊ねると、園田さんはちょっと困った顔で言ったのでぃす。
「男性で玄田さんっていうんだけど、前に勤めてた会社が…その…所謂ブラック企業というやつでね…」
ブラック企業。
ボクでも知ってるのでぃす。
サービス残業させたり、社員さんに酷いことをする悪い会社なのでぃす。
「テリアくん、玄田さんは少し疲れているから、無理しないように気を付けてあげてくださいね」
疲れていると聞いて、ボクは心配したのでぃす。
疲れている時は元気が出ないのでぃす。
「わかったのでぃす!ボクがしっかりサポートするのでぃす!」
それからボクは新人さんの為に準備をしたのでぃす。
新人さんの研修期間に教える仕事を、園田さんと打ち合わせして決めたのでぃす。
会社の業務マニュアルをちょっと手直しして、表や画像を使ったわかりやすいものにしたのでぃす。
机はしっかり拭いてピカピカにして、仕事で使う文具を引き出しに入れたのでぃす。
新人さんの席はボクの隣だから、いつでもサポートできるのでぃす!
寮に帰ってからは、同室のデジモンさん達に新人さんの話をしたのでぃす。
「ボクも先輩になるのでぃす!すごいでぃすよ!」
「楽しみなのは分かるけど、ちょっとはしゃぎ過ぎだよ」
同室のフローラモンさんがそう言ったのでぃす。
「指導係なんでしょ?先輩としてちゃんと仕事を教えられるの?」
「だ、大丈夫なのでぃす!一生懸命教えるのでぃす!」
「まあまあ、大丈夫でしょ」
同じく同室のガジモンさんがお菓子を食べながら言ったのでぃす。
「うちの事務員さん仕事出来る人が多いし、何かあってもすぐサポートしてもらえるって」
「何だかボクがダメな奴って言われてる気分でぃす…」
ボクはしょげたのでぃす。
新人さんが来る前日、ボクはすごくどきどきしていたのでぃす。
「なんだか緊張するのでぃす…」
「テリアちゃんなら大丈夫よ」
同じ事務員の国戸田さんがそう言ってくれたのでぃす。
「テリアちゃん、仕事もバリバリ出来るし、新人さんも安心して頼れるよ」
「そ、そうでぃすか…?」
国戸田さんに褒められて、ボクは嬉しかったのでぃす。
「じゃあボク頑張るのでぃす!」
ボクはガッツポーズをしたのでぃす。
次の日、ボクはそわそわしながら新人さんを待っていたのでぃす。
どんな人なのでぃす?背は高いでぃす?優しい人だといいのでぃすが…。
一人でほわほわ考えていたらみんなが笑ったのでぃす。
「テリアちゃん、変顔になってるよ」
新人さんについて考えていたら、顔に出ていたみたいでぃす。
ボクは恥ずかしかったから、資料の紙で顔を隠したのでぃす。
でも他の社員さんも、新人さんが来るからちょっとそわそわしていたのでぃす。
事務所の扉が開いて、園田さんと一緒に男の人が入ってきたのでぃす。
その人は、背の高い男の人だったのでぃす。
「皆さん、新入社員の玄田さんです」
「玄田一郎です。宜しくお願いします」
頭を下げた新人さんはボクを見るとギョッとした顔になったのでぃす。
きっと前の会社にはデジモンがいなかったのでぃす。
いくらデジモンがシャカイシンシュツしたといっても、デジモンに対するヘンケンが無いとは限らないのでぃす。
ボクはそういうの気にしないから平気なのでぃす。
園田さんは、玄田さんを連れてボクの所に来たのでぃす。
「玄田さん、こちらが指導係のテリアモンくんです」
「ボクはテリアモンなのでぃす。よろしくなのでぃす」
ボクはぺこりとお辞儀をしたのでぃす。
「研修中は私とテリアモンくんが指導係なので、困ったことや質問があれば何でも聞いてください」
「は、はい」
玄田さんはなんだか緊張していたのでぃす。
だからボクはマンメンのエミをしたのでぃす。
それを見たみんなは笑ったのでぃす。
園田さんは笑うのを我慢してたのでぃすが、体が震えていたのでぃす。
国戸田さんはお茶を吹き出したのでぃす。
「テリアちゃん、その顔!面白すぎる!」
ボクはへへーんと得意げになったのでぃす。
マンメンのエミはボクの十八番なのでぃす。
どんなヒトもデジモンも、見れば笑っちゃうとっておきの一発芸なのでぃす。
でも、玄田さんは笑ってなくて戸惑った顔をしてたのでぃす。
ボクの十八番が玄田さんには通用しなかったのでぃす。
ボクはしょぼんとなったのでぃす。
「ゴホン…ではあとはテリアモンくんに任せます」
「わかったのでぃす」
園田さんは自分の仕事に戻ったのでぃす。
ボクは玄田さんに向かい合ったのでぃす。
「では早速研修を始めるのでぃす」
「えっと…よろしくお願いします。テリア先輩」
「‼︎」
玄田さんに先輩って言われて、ボクはすごくすごく嬉しかったのでぃす!
ボクは本当に先輩になったのでぃす!
「分からないことがあったら先輩のボクに聞くのでぃす!」
ボクはえっへんと胸を張ったのでぃす!
それから研修が始まって、ボクは玄田さんに仕事の内容を説明したのでぃす。
玄田さんはどんな仕事もすぐ出来るようになったのでぃす。
データ入力は、ボクよりもタイピングが速くてあっという間に終わっちゃったのでぃす。
書類作りも、玄田さんは文書作成ソフトを使いこなしてささっと作ったのでぃす。
「玄田さんはすごいのでぃす!」
「そ、そんなことはありません。先輩の教え方が上手なので…私なんて…」
そう言って玄田さんは俯いたのでぃす。
お昼休憩になって、ボクはデジモン寮にある食堂へ向かって歩いていたのでぃす。
そうしたら、玄田さんが階段に座ってお弁当を食べていたのでぃす。
「玄田さん、どうしたのでぃす?」
「ああ、テリア先輩…」
玄田さんは俯いて言ったのでぃす。
「前の職場では、ずっとこうして階段で食べていたので…」
それはひどいのでぃす!
こんな寂しい場所でご飯を食べても美味しくないのでぃす!
「玄田さん、ボクと一緒に来るのでぃす!」
ボクは玄田さんの腕を引っ張ったのでぃす。
「テリア先輩!?」
ボクは玄田さんを連れて、デジモンの寮にある食堂に行ったのでぃす。
食堂にはいっぱいデジモンがいてご飯を食べていたのでぃす。
「お、遅かったじゃねえかテリアモン…と?」
エプロンを着けたデビモンさんが声をかけてきたのでぃす。
デビモンさんは食堂のコックさんなのでぃす。
毎日美味しいご飯を作ってくれるのでぃす。
デジタルワールドにいた頃は悪いことをいっぱいしていたらしいのでぃすが、そのことはクロレキシだと言って秘密にしているのでぃす。
「デビモンさん、新人の玄田さんでぃす」
「げ、玄田一郎です。宜しくお願いします」
玄田さんは緊張してたのでぃす。
「ああ、あんたが新人か」
デビモンさんはニヤリと笑ったのでぃす。
「テリアモンが『ボクも先輩になるのでぃす』ってはしゃいでたからな。幼年期相手に先輩ごっこしてたしな。後輩ができて嬉しいか?テリア先輩?」
「わわ!それは言っちゃだめなのでぃす!」
デビモンさんはちょっといじわるなのでぃす…。
「それで今日は何にする?」
「日替わり定食にするのでぃす」
「はいよ」
デビモンさんは調理場に戻ったのでぃす。
周りを気にしながら、玄田さんは小声で言ったのでぃす。
「ここはデジモンさんの食堂ですよね…私が居てもいいのでしょうか…?」
玄田さんは真面目な人なのでぃす。
きっとボク達デジモンに気を遣っているのでぃす。
「大丈夫でぃす。皆んな気にしてないのでぃす。だから安心してお弁当を食べるのでぃす」
周りのデジモン達も頷いたり、大丈夫だって言ったりしたのでぃす。
「今日の日替わりは生姜焼きだぞ」
「わーいお肉なのでぃす!」
焼きたての生姜焼きのいい匂いを嗅いだら、ボクのお腹が鳴ったのでぃす。
「おっ、手作り弁当か。美味そうだな」
デビモンさんは玄田さんのお弁当を見て言ったのでぃす。
玄田さんのお弁当は、サラダに玉子焼きに唐揚げに…美味しいものがいっぱい詰まったお弁当だったのでぃす。
「えっと、妻が作ってくれまして…」
「そりゃいいオクサンだな」
デビモンさんの言葉を聞いて、玄田さんは明るい顔になったのでぃす。
それからごはんを食べながら、色々な話をしたのでぃす。
ボクがハッピーワークで働くことになった時の話や、玄田さんの家族について話したのでぃす。
玄田さんにはヒトの幼年期…コドモが産まれたそうなのでぃす。
「ボクもコドモに会ってみたいのでぃす」
「そうですね…先輩にうちの子を会わせたいです」
玄田さんは優しく微笑んだのでぃす。
ボクが生姜焼きをゆっくり味わっていると、
「ふう。ごちそうさまです」
そう言って、玄田さんはお箸を置いたのでぃす。
でも、玄田さんのお弁当は半分しか減ってなかったのでぃす。
「まだ全部食べてないのでぃす!」
「最近食欲がなくて…」
「大丈夫か?食欲が無いんだったら、粥でよければ作ってやるけど…」
デビモンさんが心配そうに言うと、
「いえ、その…大丈夫です」
玄田さんはそう言ったのでぃす。
でもボクは心配だったのでぃす。
園田さんが言ってたのを思い出したのでぃす。
『玄田さんは少し疲れているから、無理しないように気を付けてあげてくださいね』
きっと玄田さんは、ごはんが食べられないくらい無理してるのでぃす。
お昼からは玄田さんが無理しないように気をつけると決めたのでぃす!
お昼の休憩が終わって、ボクは玄田さんを連れて資料室に行ったのでぃす。
「午後は、資料室で書類の整理なのでぃす」
「はい」
資料室には、手書きの書類がいっぱいあるのでぃす。
会社がハッピーワークになる前、「結月商事」の時に作られたものだと園田さんは言ってたのでぃす。
結月商事は、まだデジタルワールドの存在が知られていない頃からデジモンの保護をしていたそうでぃす。
初代社長の結月巳百合さんは、何故かデジモンやデジタルワールドの知識があったらしいのでぃす。
ボクはこの結月さんが実はデジモンじゃないかと考えているのでぃす…。
園田さんには否定されたのでぃすが、この推理には自信があるのでぃす!
資料室で、玄田さんと二人でデータ化する書類を抜き出したり、書類が年代別に並んでいるか確認したり、地道な作業をしたのでぃす。
ボクは時々玄田さんを見たのでぃす。
玄田さんは黙々と作業をしていたのでぃす。
無理をしているようには見えなかったけど、もしかしたら実は辛いのかもしれないのでぃす。
「玄田さん、ちょっと休憩するのでぃす」
「あ…はい…分かりました」
ボク達は少し休憩したのでぃす。
玄田さんはちょっと落ち着かない様子だったのでぃす。
「テリアちゃん、玄田さん。お疲れ様」
国戸田さんがお茶を持ってきてくれたのでぃす。
「ありがとうなのでぃす」
「ありがとうございます」
ボク達はお茶をいただいたのでぃす。
玄田さんはお茶を飲んでも落ち着かないみたいなのでぃす。
「玄田さんどうしたのでぃす?」
「えっと…その…トイレに行きたくて…」
「トイレでぃすか!急いで行くのでぃす!」
「行ってもいいのですか?」
「もちろんでぃす!」
「じゃあすみませんが行ってきます」
玄田さんは小走りで部屋を出たのでぃす。
「玄田さん、ずっとトイレを我慢してたのでぃすね」
「きっと前の職場じゃトイレも自由に行けなかったんだね…」
玄田さんがトイレに行きやすいように、ボクがもっともっと気を付けないと!
ボクは先輩でぃすから!
待ってたぜ第二話でぃす! 夏P(ナッピー)です。
前回は人間の究極体だったのに対して、今度は人間の幼年期なる凶悪なワードが出てきているううううううう! 玄田さんもテリア先輩の指導や補佐の甲斐あってか、1話の内にすっかり成長、というか元々持っていた(?)強みを出せるようになったようで。しかしブラック企業を知ってるでぃすってお前、知っているのか雷電!?
玄田先輩がテリア先輩を家ではとても可愛いと話しているのに和みましたが、所々で垣間見せてくるブラック企業時代の息苦しさにこちらも息が詰まるような思いをしてみたり。あと初代社長は絶対デジモンだ! テリア先輩の予想だからな!
そんなわけで、この辺りで感想とさせて頂きます。