ザッソーモンでもわかるオリキャラ紹介
・春日竹花:突然デジタルワールドに連れてこられた元一般人なテイマーの女の子(中一)。この作品では『リアクション豊かなツッコミ役』ぐらいの認識でOKです。
・ポニモン:馬の被り物と缶ぽっくりが特徴の成長期デジモン。喋れないので「……!」とか「……?」とか出てきたらだいたいポニモンのセリフです。
「デジタルワールド」
それは争いが絶えることのない弱肉強食の世界。この世界で生きるモンスター達は、「勝利」の二文字を得るために戦い続ける。
そんな果てない闘争の先、彼らを待ち受ける結末は希望の光か、はたまた深淵の闇か。そして今日も頂点を決めるための仁義なき戦いが、太陽の光降り注ぐ灼熱の荒野で始まろうとしていた。
「さあやって参りました! デジタルワールド最速の韋駄天を決める走りの殿堂! 『第一回ブラッディーダービーin彼岸記念』! 即席の特設会場には大勢の観客が詰めかけています。会場の熱気と合わせて灼熱に照らされる大地が、今日の戦いの激しさを予感させます! 実況はこの私、『先日、ウッキウキでクロスモンに進化したらガイアフォースぶつけられて焼鳥になりかけたオウム』、デジタルワールドの三枚舌ことパロットモンがお送りします! 隣には今大会のゲスト兼解説を担当いたします、テイマーの春日竹花さんにお越しいただきました。竹花さん、今日はよろしくお願いします!」
「よ、よろしくお願いします」
「本日のために用意した特設コースは一周10km! これから五頭の出走馬にそのコースを走っていただき、一番最初にスタート地点へ戻ってきた選手を優勝とします! コースの各所には障害物や休憩地点もありますので、うまくかわしたり利用しながらゴールを目指してください! ウマだけに!」
(どうしてこんなことに……)
~昨日~
「お彼岸レースに参加してほしい?」
「はい」
竹花とパートナーのポニモンは、ロイヤルナイツの一体『スレイプモン』が依頼するクエストを受けるため、デジタルワールドのとある荒野に立つ小さな民家を訪れていた。
見上げるほどの巨体を持ち、赤い鎧から六本の脚を生やしたウマのような姿に反して流暢に人語を話すスレイプモンに、はじめは竹花もポニモンも圧倒された。だが話していくうちにその落ち着いた雰囲気に感化され、今の今までクエストそっちのけで雑談に興じていたのである。
「毎年この時期になると、各地の馬っぽいデジモンが集まってレースをするのです」
「馬っぽいデジモン」
「ほら、人間世界で『お彼岸』ってあるじゃないですか? あの死者を運ぶために馬が最速を競い牛が最遅を競うっていうお祭り」
「聞いたことないですそんなイベント」
「私も馬っぽい見た目なので毎年参加しては優勝をかっさらっていたのですが、今年は北方警備の勤務と時期が被ってしまって……」
(シフト制なんだ……)
「なので、今年は馬っぽいデジモンをパートナーにしている貴女に代わりに出てもらおうと思いまして。あ、もちろんレースを盛り上げてさえくれれば順位は問わないですよ」
「はあ……、まあレースに出るだけなら特に問題ないですけど。それだったら普通に不参加で良くないですか?」
「実はここだけの話、毎年参加者不足に悩まされているんです。このレース」
(だったらやめればいいんじゃ……)
~そして現在~
(参加するとは言ったけど、まさか解説までやらされるなんてね……。はあ、どうせなら私も走りたかったなぁ)
「それではこの辺りで出走馬の紹介を致しましょう! 竹花さん、準備はよろしいですか?」
「へっ……? あっはい、どうぞ! どうぞどうぞ!」
「それでは参りましょう! まずはエントリーナンバー一番! デーヴァ代表の参戦となります、インダラモンの『キザナホラガイ』です!」
「いきなり二足歩行!?」
「顔が馬っぽいのでOKです! それではキザナホラガイ、意気込みをどうぞ!」
「あの赤馬野郎が出てこないんなら俺にも勝機があるってこった。今日こそ優勝賞品はいただきだぜ」
「やる気マンマンですね! 続いてエントリーナンバー二番! ギアサバンナからやって来たシマユニモンの『サバナトップガン』です!」
「シマウマじゃん!」
「シマウマも馬の仲間なのでOKです!」
「ギアサバンナのみんなから白い目で見送られて来ました! 頑張ります!」
「それって蔑まれてるんじゃ……」
「さあさあどんどん行きましょう! エントリーナンバー三番! 地獄からの使者、ザンバモン……」
「よかった、ちゃんと馬みたいなデジモンもいるんだ」
「……の下半身!」
「下半身!?」
「戦からの帰りということで下半身のみの出走となります、ザンバモンの『ナゼカアシダケ』! 意気込みをどうぞ!」
「ヒヒーン、ブルブルッ」
「しかも喋れないんだ……」
「次はエントリーナンバー四番……おっと、あの姿は!?」
「あれってスレイプモン……の着ぐるみ? 中におっさんが入ってますけど……」
「え、えーただいま入りました情報によりますと、今回なんとサプライズで出走されるようです! スレイプモンの上半身!」
「上半身!!?」
「諸事情により脚二本での出馬となるようです、『ハリボテスレイプ』!」(※デジモンの皆様はベツモンの現実改変能力により認識災害が発動しスレイプモンに見えています)
「テメーらには脚二本で充分なんだよ! 無様に負けて散れ!」
「言ってる! ハリボテって言ってるから! お願いみんな気づいて!」
「さて最後に紹介いたします、エントリーナンバー五番! 文字通り本大会のダークホース、ポニモンの『ポニカンポックリ』! スレイプモンの代理での参加となりますが、その実力やいかに!?」
「『ポニカンポックリ』って……自分で考えたのかな」
「……! ……!!」
「ふむふむ、なるほど……意気込みありがとうございます! で、なんて言ってるのかわかりますか? 竹花さん」
「私もわかりません」
「続いては皆様お待ちかね! 優勝賞品のご紹介です! 今大会の優勝賞品はこちら! 馬っぽい皆さんの大好物! 『干しザッソーモン一年分』!!」
「ギャアアアア!!」
「ど、どうしました竹花さん!?」
「キモい! グロい! 恐い! 無理!」
「竹花さん罵倒の四連コンボ! しかし会場の盛り上がりは最高潮です! ポニモンも大喜びですよ!」
「ウソでしょ……」
「なお、優勝賞品は『株式会社エッセンシャル・ブラッド』通称『エッセ・ブ』のヴァンデモン社長より賜りました。この場を借りて御礼申し上げます」
「あ、だからブラッディーダービーなのね」
「会場の皆さん、そして全国のモニタモンの前の皆さん、長らくお待たせしました! 選手の紹介も終わりましたので、いよいよレース開始でございます! スタートの合図はペガスモンとユニモンのいななきにて行います!」
「僕ら空飛べるからって」
「毎年この役目をやらされるんです」
「えっ、かわいそう……」
「「せーの、」」
ヒヒーン!
「さぁ各馬一斉にスタート! 先頭はナゼカアシダケ、半馬身遅れてサバナトップガンとキザナホラガイ、さらに二馬身離れてハリボテスレイプ、後方出遅れたかポニカンポックリ!」
「ホントの競馬実況みたい……」
「おっと、ここで突然脚を止めたぞハリボテスレイプ!」
「布団が! 吹っ飛んだ~!!」
「「「寒ッ!?」」」
「出た~!! ハリボテスレイプ必殺の『オーディンブレス(コールドギャグ)』! 前方を走っていた各馬が文字通り凍っていきます!」(※デジモンの皆様はベツモンの現実改変能力により認識災害が発動しスレイプモンに見えています)
「ええ!? これってアリなんですか!?」
「直接攻撃しているわけではないのでOKです! 特殊な高等プログラム言語を発したら突然寒くなって出走馬が動かなくなっただけなので!」(※デジモンの皆様はベツモンの現実改変能力により認識災害(ry
「てゆーかギャグって……やっぱり絶対あれただのおじさんでしょ」
「さぁ残すはハリボテスレイプとポニカンポックリの一騎討ち! 優勝の栄冠と干しザッソーモン一年分を手にするのは果たしてどちらなのか!?」
「やめて~! ポニモン勝たないで~! どっちもいらないから~!」
「あーっと! ここでハリボテスレイプ引き返した! まさかポニカンポックリも凍らせて勝利を確実にするつもりか!」(※デジモンの皆様は(ry
「言ってる! 『凍らせて』って自分で言っちゃってるから! それ反則なんじゃなかったっけ!?」
「アルミ缶の上に~……あるミカン!!」
「……?」
「……ポニカンポックリ、ハリボテスレイプの横を通り過ぎて行きました。竹花さん、これは一体……?」
「え……単に聴かなかったとかそんなんじゃないですか?」
「そ、そうでしょうか。さすがに成長期のデジモンにロイヤルナイツの技が効かないというのは無理があるような……」(※デジモンの(ry
「だから技じゃないって……」
「おっと、ここでハリボテスレイプの再チャレンジだ! またポニカンポックリの前に立ちはだかった!」
「コンドルがケツに、食い込んどる!」
「……?」
「や、やはり先ほどと同様にポニカンポックリは素通りしていきます! 竹花さん、これはまさか……!」
「ええ、そのまさかですね……!」
「衝撃の事実!! な、なんとポニモンはオーディンブレス(コールドギャグ)を無効化できるようです!!」(※デジモ(ry
(単にギャグを理解してないだけだー!! お願いみんな気づいてー!)
「あーっと! だがしかし諦めないハリボテスレイプ! こうなったら意地でもポニカンポックリを凍らせるつもりだ~!!」
「そんなのいいから速くゴールしてください!」
「ばあちゃんが池に落ちた、バッチャーン! 坊っちゃんが池に落ちた、ボッチャーン! チーターが池に落チーター!」
「……?」
「池ポチャ三連単! しかしポニカンポックリ効いてない!」
「これいつまで続くんですか……?」
「レースはかなりの盛り上がりを見せて参りました! それでは一旦ここでCMです」
「このタイミングで!!?」
~五時間後~
「皆様、大変お待たせ致しました。レースが予想以上に長引いた関係で急遽30秒CMを600本ほど流させていただきました」
「やっぱりつまらなかったんじゃん! てゆーか30秒を600本って……五時間!? もうそんなに経ったの!?」
「坊主が屏風に上手な坊主の絵を描いた! 隣の客はよく柿食う客だ!」
「……?」
「ハリボテスレイプ、まだ諦めない! 聖騎士が見せるその根性に、ワタクシ涙が止まりません!」
「いや、もはやギャグでもなんでもないんですけど……」
「そして一方のポニカンポックリもここまで怒涛のノンストップ! ゆっくり、しかし確実に一歩一歩を踏みしめ進んでおります!」
「なんかもうあのおじさんがセコンドに見えてきました」
「ここまで……限界……か」
「だぁー!! ゴール直前でハリボテスレイプ無念のリタイアだー!! 詠唱によるSP切れかー!? しかし最後まで戦い抜いたその真摯なるスポーツマンシップに、ここは拍手で応えるべきでしょう!」
「一番スポーツマンシップから遠い存在なんですけど……」
「……!」
「そして今ここでポニカンポックリがゴーーール!! 記録は五時間と一分二秒! 竹花さん、優勝したパートナーに何か一言を!」
「2kmを一時間ペースか~。ポニモンにしては速い方だと思います」
「ありがとうございます! それでは優勝したポニカンポックリには賞品の干しザッソーモン一年分を贈呈します!」
「イヤーーー!! 五時間も経ってるから絶対忘れてると思ったのに~!」
「……!」
「おっとー!? ポニカンポックリもといポニモンが干しザッソーモンの山に飛び込みました! どうやらフカフカのベッドとして楽しんでいるようです!」
「あ、なんだ食べるわけじゃなかったのね。良かった~……」
「さてそれではそろそろいい時間ですので、この辺りで番組終了とさせていただきます! 来週お送り致します、『最強の牛歩は俺だ! ビーフなのにチキンレースin彼岸記念』でまたお会いしましょう!」
(カンペに『早く終わらせろ』って書いてある……)
「竹花さん、本日はありがとうございました! 来年もよろしくお願いします! 最後にカメラに向かって一言!」
「もう絶対出ません」
こうして、灼熱の荒野を舞台にした白熱の戦いは幕を下ろした。だが、これで速さへの執着が完全に消え去ったわけではない。今日も明日も明後日も、どこかでこれに勝るとも劣らない戦いが繰り広げられているのだ。そう、ここはデジタルワールド。デジモン達が生きる限り、新たな戦いは生まれ続ける……。
~数日後~
「ザッソー!」
「ザッソザッソ? ザッソー!!」
「ザッザッソー!!」
「……!」
「水かけたら復活するなんて聞ーいーてーなーいーーー!! 誰かなんとかして~~~!!」
おしまい
あとがき
まずは素敵な企画を開催してくださったへりこにあん様、並びにデジモン創作サロン様に多大なる感謝を。
ついでに本作の尊い犠牲と成り果てた大量のザッソーモンにも感謝を(生きてるけど)。アーメン
本企画、そもそも僕参加するつもりなかったんです、実は。
企画のお知らせを見た時に『インダラモンが主人公で、病弱のパートナーを喜ばせるために牛(ミノタルモン)と彼岸花(はいないので赤い花繋がりでラフレシモン)とろうそく(キャンドモン)に協力を仰いでお彼岸という名のお祭りを開く』的なお話を考えてはいました。
しかしちょうどDIGIコレ13があって準備とか宣伝とか色々やってたら見事に時間が消えていたんですね……。おお、こわいこわい。
ただ、指を加えて読むだけというのもなんか悔しいので、過去にアンソロで書いたお話とオリキャラを悪魔合体させて即席のカオス闇鍋短編を書いた次第です。
お彼岸企画ということで皆様きっとしっとりとした素敵な作品を書かれるのだろうなぁという期待があったので、僕の作品は頭を空っぽにして楽しめるタイプの────例えるなら秋の夜長にふと夏の青空を思い出させるような────サッパリとした作品に仕上がっているといいなぁという願望を胸に書き上げました。
お口直し感覚で楽しんでいただけたら嬉しいです。
・登場デジモンについて
お彼岸ということで、死者を現世に運ぶ役目を担う馬になぞらえて馬っぽいデジモンの皆様にお越しいただきました。ポニモンもその流れでのゲスト参戦です(NGワード:デジモンカルティメット2巻の宣伝)。
ザッソーモンについて:お彼岸は死者が現世にやって来ると言われているので、『死』の対となる『生』の権化ともとれるザッソーモンは本企画にピッタリなのではないでしょうか。
パロットモンについて:お彼岸は死者が現世にやって来ると言われているので、『死』の対となる『生』を取り戻す行為である電気ショック的な技を持つパロットモンは本企画にピッタリなのではないでしょうか。
拝見しましたので足跡をば!
冒頭、今回も実況は例のオウム!!!
クロスモンは鎧があるから丸焼きにはならないのでは?
と思ったんですが、自称3枚舌だし、きっと話を盛っているんだろうと思って流すことにしますね^^;
『馬っぽいデジモン』とか『下半身』とか『上半身』とか・・・
すげぇ、このワードだけで笑い死にそうです。
てか、スレイプモンの上半身が参加している中、スレイプモンの代理参加のポニモンに対してはツッコんでおこないといけませんかね・・・?
レースが始まると、なんかもうレースじゃなくなる展開。
オーディンズブレスはロイヤルナイツの名に恥じない強力な技のはずですが、
『ただし成長期には効果がない。』
なんてカードゲームの効果みたいなことが広がればロイヤルナイツへの風評被害が・・・
ベツモン、なんて罪深いデジモンなんだ!!
クロスウォーズ登場時は変なデジモンという認識が、ゴーストゲームではとんでもない能力を発揮したことにより、
評価を見直されている昨今ですが、これはとても面白い使い方でしたね。
オチに使われるザッソーモン・・・
ちょwwおまwwwこれじゃインスタントザッソーモンやないかい!!
いやまて、即席ってこれは食い物なのかっ!?
さすがわらびさん、ザッソーモンを使ってこちらの脳をバグらせてくるとは・・・
また一つ腕を上げましたね。(謎の強がり)
今後もわらびさんの「奴(ら)が」シリーズ、楽しみにしています。