5話
「そんなにそんなにそんなに手を洗ったらさぁ、がっさがさがさになっちゃうよ、弟くん」
必要以上の水が蛇口から零れ落ちる音のせいにして、サリエラはシメールの男性とも女性ともつかない軽薄な声に聞こえていないふりを決め込んだ。
だけどサリエラの手にはもう流れ落ちるような汚れは無い。そもそも『手袋』を付けていた彼の手に、最初から、汚れなど付着していない。
少年がどれだけ意識しようとも、この世界における死は、その程度の物だった。
*
襲撃者と乱入者。この2名の登場を以って花畑の『ゾーン』の探索を切り上げた女達は、『宿』へと引き上げた。
「で」
『宿』の扉を開ける前に――自分を出迎えるであろう愛しの赤ずきんと顔を合わせる前に。
確実に自分と赤ずきんとの時間の邪魔になるであろう同行者・シメールに、女は苛立ちと諦めの混ざった視線を向ける。
「貴女は何をしに来たのですか、シメール」
「お前には全然全くこれっぽっちも用は無い。用があるのは、我々とあいつ等のお客様だよ」
「……」
女が視線が自分の方へと動いた事に気が付いて、サリエラは慌てて目を逸らす。
これまでとは違った理由で、彼は女の顔を、まともには見られないでいた。
「ま、弟くんもこの調子だし? お前もどうせどうせどうせ理解が追い付いていないだろうから? ここは我々、シメールちゃんにお任せなワケ!」
「……用事が済んだら、さっさと帰って下さいよ」
結局、諦めが苛立ちに勝ったらしい。
女はドアノブに手をかけた。
「ごはんぐらい食べさせてくれてもいいじゃない、こんなにこんなにこんなに可愛い妹分が」
「兎でも食べてなさい」
と、次の瞬間には「ただいま戻りました、赤ずきんちゃん」と極限まで下げ切っていた声のトーンを心なしか弾んでいるかのような調子にまで引き上げる女。
シメールはサリエラの方へと振り返ると、女の方を骨のトカゲのパペットで指し示しながら、にんまりと表情を歪めた。
「まったくまったくまったく。ヒドい奴だよねぇ。弟くんも、そうは思わない?」
「え、あの」
「あははは、悪い悪い悪いね! 本人が居る前で、言い辛いよね」
けらけら笑うシメールに、サリエラは眉を寄せる。
平時でも苦手な相手だな、というのが率直な感想だった。
「おかえりなさいませ、猟師様、杭様、サモエド様。……あれ?」
「サモエドだとロシア原産の白い犬になりますね。しかし彼は金髪碧眼のイタリア人、サリエラなのですよ赤ずきんちゃん。それから後ろのヤツは気にしなくていいです」
「やあやあやあ! 『アンドロモン』のお姉ちゃんも久しぶりだね!」
表情の乏しいアンドロイドの瞳が、それでも困惑したように女とシメールの間を右往左往する。
「あれ~? 赤ずきんとシメールって~、会った事あるの~?」
「むかーし昔々ね! それこそ」
「シメール」
瞬間、杭の切っ先がシメールの細い首にぴたりと横づけされる。
最も、肝心の彼女は、やれやれと呆れたように、腰に手を当てて肩をすくめるばかりだったが。
「あー、はいはいはい。なんでもありませんよーだ。流石の我々も真ん中の首は面倒だからね。と、言う訳で自己紹介! 我々は『『カオスデュークモン』の武器屋』の従業員にして『デルタモン』の選ばれし子供、シメールちゃんなのです! 以後、お見知りおきを」
「ええっと、はい。赤ずきんは、『アンドロモン』の赤ずきんです。よろしくお願いします、シメール様」
「よろしくしなくていいです」
赤ずきんの一人称が「赤ずきん」だと知るなり、「こりゃいいね! 『カオスデュークモン』の奴よりずっとずっとずっといい!」と笑うシメール。「あんなのと一緒にしないでくれませんかね」と、女は赤ずきんの前でさえ感情を抑えられないでいるようで。
どうにか流れを変えた方が良いと思ったのだろう。杭が間延びした口調で赤ずきんへと声をかける。
「ところで赤ずきん~。今日の狩人さん達の晩御飯は~?」
「あ、はい。本日のご夕飯には、ポークソテーをご用意しています」
「……」
心なしか、サリエラの表情が曇る。
未だにどこか酸い臭いの残る口内は、到底肉の類を求める気分にはなってくれそうになかった。下手をすると、想像しただけでも胃液がせり上がりそうな程で。
シメールを静かに威嚇し続けていた女も、流石にサリエラの沈黙には気が付いたのだろう。「すみません赤ずきんちゃん。サリエラはどうにもお腹の調子が悪いらしいです」と普通に気を遣っているのだか素で見当違いなのか、いまいち判別の付かない助け舟を出す始末だ。
「まあ。それではサンダル様の分は冷蔵庫に仕舞っておきます。どうかお大事になさってください。後程お腹に良さそうなものをお持ちしましょうか?」
「い、いや……いい。今日は、いいよ」
心の底から心配そうな赤ずきんから視線を逸らしながら首を横に振るしか出来ないサリエラ。
赤ずきんの方も、それ以上追及はしなかった。少しだけ戸惑うように首を傾けてから、「では、猟師様のお食事をご用意してきます」と台所の方へと戻って行く。
「それでは、赤ずきんちゃんが準備をしてくれている間に、わたくしは手を洗ってきます。サリエラは?」
「それは、俺も行く」
「じゃあじゃあじゃあ、その後だね! 弟くんとのお喋りは!」
がしり、と遠慮なくパペットの口で肩を掴んできたシメールに、サリエラの身体が跳ねる。
女は相変わらずの呆れ顔のまま、杭の尖っていない方の先でシメールの身体を押した。
「ちょっかいをかけるだけのつもりなら、程ほどにしてくださいね、シメール」
「やだなぁ」
と、すぅ、と目を細めたシメールが、サリエラの頬に顔を寄せた。
「真面目な話だよ。我々がするのは、ね」
こうなるとサリエラはどこにも視線を向けられなくて、辛うじて「がんばってね~、サリエラ~」と自分を鼓舞する杭の声に、耳を傾けるくらいしか出来なかった。
*
「なるほどなるほどなるほど! ここが弟くんのお部屋! 狭いね!!」
手洗いを仕方なく切り上げ部屋に戻るなり、シメールはサリエラの脇をするりと抜けたかと思うと彼のベッドに飛び込んでトランポリンを始める。
「あ、あの」
「生意気! 部屋は狭いくせに、ベッドは我々よりも大分大分大分いいヤツ使ってるね。だから大目に見てよ。少しくらい遊ばせてちょうだい」
「……姉さんの事を、教えてくれるんだよな?」
嘘のように、シメールが動きを止めた。
「そうだよ」
最後の弾みを利用して床に降り立ったシメールが、にやりと口角を上げる。
「聞けばお前の姉……我々その他が言うところの『聖母様』を探すために、弟くんは『この世界』に来たんでしょ? よよよ。愛だね愛だね愛だね。泣かせるね」
「そんなのじゃ」
「「そんなの」でありなよ。その方が、少なくとも我々は気分が良い」
その時、シメールの笑みに僅かに自嘲が混じるのをサリエラは見た。
だが、それについて問うよりも前に
「「じゃあ、どうしてあの女はそれを俺に教えてくれなかったの?」ってトコ?」
シメールの、では無くトカゲのパペットの口が動いて、腹話術のように声を発する。
実際に、知りたい話ではあった。
シメールの嘲笑いが、自分から、ここには居ない女の方へと、移行する。
「それをあの女に求めてやるのは酷な話だよ弟くん。あの女は自分の名前を拒絶されているのの他に、聖母様の容姿に関する記憶も剥奪されちゃってるんだよ。まあ、自業自得と言えば自業自得。自業自得なんだけど」
「忘れてるんじゃ無くて?」
「それが出来るなら、話はもっと単純だったんだけどね」
彼女の口から漏れ出す笑い声はあくまで軽薄だ。軽薄であるが故に、どこか、仄暗い。
「とりあえず、口で説明すると3つあっても足りないくらいだからね。実際に、見てもらおうかな」
と、シメールがそんな事を口にするなり、途端に彼女の頭身が縮む。
思わず身を引くサリエラの前で、辛うじて人型は保ったまま、真っ黒な影のようになったシメールはうねうねと形を変え--やがて、黒い忍者服に身を包んだ子供のような体系の、頭がテレビのようになった『怪物』が、姿を現した。
「じゃじゃじゃーん! シメールちゃん、進化! 『ハイビジョンモニタモン』! ……なんちゃって。嘘嘘嘘。嘘だよ弟くん。『選ばれし子供』は、姿形までは『怪物』にはなれないから『選ばれし子供』なんだからね」
そう言って腰に手を当て、胸を張るシメールだったが、異形の頭では表情すら予測しようもない。
ただ、視界には困っていないらしい。「じゃあそれは」とでも言いたげなサリエラの先手を打つように、シメールは台詞を連ねる。
「改めて自己紹介。我々はシメール。3つ首の『怪物』・『デルタモン』の『選ばれし子供』。それから今は、究極体の『メタモルモン』というデジモンさ。よろしく、よろしく。よろしくね」
「メタモル……」
「そう、『メタモルモン』。こいつは名前の通り、『変身』の能力を持つ『怪物』でね。もっとももっとももっとも。我々の能力の原理は『変身』というよりも『再現』なのだけれど、この辺は説明がとてもとてもとても面倒臭いから一先ず置いておくね」
ぶつん、と音がして、モニター装置の頭に映像が映し出される。
白く、無機質な印象を受ける建造物の様子だ。
「今映しているのは、『この世界』を管理していた研究者連中が使用していたメインの『ゾーン』。……彼らが何をしていたのかについては、流石の流石に流石のあの女も、お話はしてるでしょ?」
記憶を辿るサリエラ。
蘇るのは、風呂場で女から受けた説明だ。
「「『怪物』に理性を与える研究」……だっけ?」
「うんうんうん。そうだね。それもある。それもあるし、それもそうなんだけれど――はぁ、あの女。とってもとってもとっても大事な部分が抜けている。いやまあ、間違ってはいないんだけれど……」
「?」
「一口に「『怪物』に理性を与える」とはいっても、アプローチの仕方は色々色々色々あったワケ」
例えば、壊れた『神』の代替品を創る。だとか。
シメールが続けた言葉に、首を傾げていたサリエラも思わず息をのむ。
『この世界』の『神』が、出現した時から壊れていたというのはサリエラも既に女から聞いている。
言われてみれば、確かに。先に聞いた方法で『理性持ち』を作るよりも、可能であるのなら、新しい管理システムを作ってしまった方が、何かと手っ取り早いに違いなく。
「ま、それも『理性持ち』を作るシステムが上手くいったからこそ。なんだけれどね。だから、まことにまことにまことに不本意ながらあの女をフォローするとしたら、これは『目的』のための『手段』の中でたまたま発生した『奇跡』だから、一応、あの女、嘘は言っていなかったり」
口調の軽さは変わらないが、シメールの方もどうにも女の事が気に喰わないらしい。彼女がこの場に居ないためか、先程よりも振舞いがずっと顕著だった。
シメールの頭部に映し出された画像が、動画へと変わる。
前を行く大人の男性について歩く誰かの目を通した映像が、白い廊下を抜け、同じように大人に連れられた何人かの子供達が集まった、だだっ広い空間へと辿り着いた。
「ここはね、実験の成果をお披露目する会場。……ま、実質闘技場なワケなんだけれど」
中央には黒い線を引いて作られたコートがあり、そこでは2人の子供が、子供とは思えないような俊敏な動きで取っ組み合いをしている。
時に殴り、蹴り、爪を立て、歯を剥き出しにして。
見ている方も見ている方で、床や壁にまで血が飛び散っても、白衣姿の大人たちは何食わぬ顔で視線を手元のパッドと子供達との間を交互に行き来させながら、熱心に記録を続けている。
しばらくして、決着がついたようだ。
片方の子供が、荒い呼吸を繰り返しながら地面に突っ伏して、動けなくなる。
もう片方の子供も立ってはいるものの、全身傷だらけで、上げた雄叫びはどことなくか細い。
……両者を見ている研究者らしき大人たちは、どちらも浮かない表情をしていた。
と、
「お疲れ様」
コートの方に悠々と、1人の男性が歩いて来る。
研究者も、子供たちも、彼に向って、頭を下げた。
男は今戦っていた子供達の回収を促すと、この映像の一人称となっている誰かの方へと、歩みを進めて。
「その子が、第3棟の最高傑作?」
黒の短髪に黄色い肌。アジア系の男性は、誰かの方を覗き込む。
「はい。例の特異体質の」
「実戦は今日が初めてなんだっけ?」
「ええ。しかし、イチノマエ先生のご期待には沿えるかと」
「それは楽しみだ。では、こちらもあの子を出そうかな」
おいで、 。
音声にノイズが走ったと思った瞬間、1人の少女が一瞬で、男の前に姿を現した。
ごくり、と、誰かの隣から息をのむ音が聞こえた。
そしてその音は、サリエラ自身の喉からも。
「……光栄です。まさか先生の作品に相手をしてもらえるとは」
「それだけ期待しているんだよ、君達のところのその子には。『怪物』に対処できる『選ばれし子供』はいくら居たって足りないくらいだから」
黒檀の髪に、赤茶けた瞳。
イチノマエと呼ばれた男と同じ民族らしい少女は、唇を真一文字に結んで、何の感情も無く動画の主を見下ろしている。
サリエラと同い年くらいの、女の姿が、そこにあった。
「ちょっとシーン飛ばすね。単純に、弟くん多分きっと恐らく酔っちゃうから。我々だってなにもなにもなにもわざわざ自分達がボコボコにされてる時の映像リピートしたくないからさ」
シメールが言うなり、画面が切り替わる。
半分が何か布のような物で覆われているのか不明瞭になった画像。その辛うじて見える部分では、右腕を三角巾で吊るした女が動画の主――当時のシメール――に先行する形で歩いていた。
「腕を折られたのは初めて。驚いた」
「なにもなにもなにも、説得力が無い」
「デジコアの主が左利きじゃなかったら、危なかった」
無駄話をするな、と、誰かがシメールを小突いたらしい。視界が揺れる。
不服そうに、小さく呻くシメール。と、その間に、目的地に到着したらしい。彼女達の後ろを歩いていたらしいイチノマエが前に出て、一同が止まった扉の前に、何らかの端末をかざした。
「さあ、ここから先は、私と『選ばれし子供』の2人だけで。君は向こうに戻るといい」
「え? いや、しかし」
「3棟の子供達はこの子だけじゃないだろう? ……今後とも、更なる成果を期待しているよ」
間を一拍だけ置いて、承知しました、ともう1人居たらしい男が去っていく。
鼻を鳴らすような音が、幽かに、音声に混じっていた。
イチノマエに促されるまま2人が扉を抜けた先には、広いが、酷く殺風景な部屋が広がっていた。
そしてその中央に、部屋に対してあまりにも鮮やかな、赤色が一点。
サリエラと、映像の中のシメールが息を呑んだのは、全く同時の出来事だった。
「いらっしゃい。初めまして、可愛い子」
髪の色を除けばサリエラと瓜二つの少女が、あどけない微笑を浮かべていた。
「早速だけれど、貴女の名前を、教えて頂戴」
「これが、お前のお姉様。そして我々とその他たちのとっての、聖母様だ」
画面の中の景色が全て制止する。
生まれて初めて向かい合った姉は、液晶画面の隔たりも含めてまるで狂った鏡のような印象を引き起こし、サリエラは思わずめまいを覚える。
だが同時に、少なからず、けして心地よい感覚では無いものの、納得の感情も彼の中に、芽生えていて。
「そっか。……きっと、それが原因だったんだね」
「うん?」
「『呪われた娘』って。そう書いてあったんだ。……死んだ父さんの日記にさ」
少年が『この世界』に来る3ヶ月ほど前。彼の両親は、事故でこの世を去った。
酷い事故だった。漁港に制御不能になった漁船が、猛スピードで突っ込んで来たのだ。座礁した船はバラバラになり、辺り一面が滅茶苦茶になって、しかし少年の両親は、ただ眠っているかのような、ほとんど変わらない姿で家に帰ってきた。
現実を受け入れられなくても、時間は流れた。目まぐるしく全てが片付いて、あらゆるものに置き去りにされた少年が、やっとの思いで始めた両親の遺品整理の最中に、それは見つかったのだ。
日記、と言うよりは、書き留められた懺悔だった。
そこに書かれていたのは、少年がついぞ父から聞く事の無かった、父の『前の妻』と『2人の間に出来た娘』の記録。
父の前妻は、「生まれてくる筈の無い特徴を持った娘」を産んだ直後に、息を引き取ったのだと。
そして父はその娘を、一部の知人の協力を得て、周りには死産だったという事にして、施設に預けたのだと。
「ふうん」
そっけない相槌の割に、シメールの声音は、どこか感慨深げだった。
「その施設っていうのが、イチノマエ先生の息のかかった施設だったか、そうじゃなかったけどイチノマエ先生の取り巻きの誰かがそこから引き取ったか。まあどうにせよどうにせよどうにせよ、聖母様は、捨て子だったんだね」
「……」
「いやまあ、それ自体は我々も知ってたよ当然当然当然ね。なんていったって、我々達は大概がそうだったから。でも、うん。可哀想、聖母様。何か不思議なことがあって、髪の色こそ赤色だったけれど――ちゃんと、お父さん似だったのに、ねぇ?」
腹違い。
半分しか血の繋がっていない筈の姉と自分の顔が瓜二つ、という事は、父の前の伴侶はけして不貞を働いただとか、そういう訳では無かったのだろう。
「お父さん、イケメンだったんでしょ?」と軽薄に笑うシメールとは対照的に、少年は顔をしかめていた。
「だけどだけどだけど、そういう意味では。生まれる筈の無い子が産まれるという意味では。聖母様は確かに『呪われた娘』だっただろうし、だからこそだからこそだからこそ、あのお方は『聖母』になれたんだろうね」
「……その、さっきから言ってる、『聖母様』っていうのは」
「名前の通りさ。聖母様は、お腹に『神』の子を宿していたんだ」
テレビのスピーカーから吐き出されたその音は、やはり、あくまでからりと、どこまでも軽薄に、乾いていた。
第5話あとがき
つまりこの小説のタイトルは『ド○えもん』や『サザ○さん』と大体おんなじ方式だったってワケなんだよ!!
主人公の名前をタイトルにするのは割と効果的な手法だって小説の書き方の本が言ってた!!!!
はい、という訳で『0426』第5話です。お久しぶりです、快晴です。今回も約3ヶ月ぶりですが、皆さまどのようにお過ごしでしょうか。
今回は真相話前編みたいなお話だったのですが、いかがでしたでしょうか。狩人さんが妙に赤色に固執しがちだったのはまあ、そういう訳だったんですよ。
聖母様の事だったり、零 一なんていうパンクな名前のおじさんだったり、もうちょっと下地となるお話を事前に展開しておくべきだったなと反省はしているんですが、その反面、ここまで来たらあと一息なので、正直ほっとしている部分も有ったり。
「『神』の子」概念の件についてはとても反省している。でもそれはそれとして書きたい物を書きたい欲には勝てなかったんです……。
ところでシメールたんと『カオスデュークモン』氏について、本編にこれ以上入るかどうかわからないのでここで捕足をば。
シメールたんは、『デジコア』を複数持つ事が出来る、という特異体質の持ち主でした。なので体内に限界まで『デジコア』を詰め込まれています。究極体『メタモルモン』の時はその『デジコア』からデータを引っ張り出してきて他のデジモンに変身しています。ただ『ピエモン』だけはその昔自分の力でコピーした物なので、お気に入りという設定。
『カオスデュークモン』は元々別世界でロイヤルナイツをやっていた『デュークモン』で、しかし世界の危機にもかかわらず身内と内ゲバやるのが嫌で武器屋をしながら引き籠っていたところ、キレたその世界の管理プログラムにダイナミックお左遷をくらい、『デジコア』だけで『この世界』に流れ着いたところ最初にそれを見つけた研究者が自分自身にそのコアを移植して今の状態になった、という設定です。
フロンティアの例の彼から妄想を膨らませたとか、そんなん。
とまあそんな感じで好き放題妄想しながらやりたい放題書いて来た本作ですが、恐らく次々回あたりで幕となります。年内完結を目指したい。
少なくとも次回で「サリエラの姉がどうして死んだのか」と「狩人さんの完全体時以外の『デジコア』が何なのか」については明かされると思います。がんばるんだ、サリエラ少年。
どうか次回も目を通していただけたら、作者としては、幸いです。
以下、感想返信コーナーです。
パラレル様
この度も感想をありがとうございます。毎回小躍りしております。
明太マヨ、あくまで個人調べになりますが、「冷たい魚の卵」っていうのが大層に評判悪いらしいです。同じ理由でイクラを敬遠する外国の方も多いそうです。
あ、ただ「明太パスタはおいしい」みたいな意見はちらほら見かけたので、料理次第ではサリエラくんもぱくぱく食べてしまうかも……? なんにせよ、難しいですね、文化の違い。
サリエラくんがデジモンの命を奪うシーンは、この小説を書き始める時から書く事を決めていた場面だったりします。ある意味で、狩人さんとは対比になる部分かと。ようやく彼に割と普通の少年っぽい描写してあげられたような気がしますね……。結構力を入れて書いた覚えがあります。
シメールは顔の良い胡散臭い枠で、今回のお話では存分に胡散臭くやってくれたように思います。この子にもそれなりに思うところがあって、まだ出番はありますので、この先も見ていただけたら、作者としてもとてもうれしいです。
どうか最後までお付き合い頂けるよう、こちらも精一杯頑張ります。
それではまた、『0426』第6話でお会いしましょう。